淡路島から瀬戸内海へ、日本のこころを求める

この20日には、私が顧問を務める船会社の主催で、淡路島ぶらり一周の船旅が始まりました。この夏の日曜日を中心に10回ほど展開されるもので、先日メディア各社を対象に試乗会(ほかに一般公募客も参加)をしたところ絶賛を博し、新聞各紙やテレビで報道されましたのでご存知かもしれません。明石港を出発し、津名港、洲本港、福良港と三か所に立ち寄って、それぞれの地で二時間ほど観光をして回ろうという企画です。参加した記者(夕刊フジ紙)は、「明石海峡大橋を真下から見上げる眺めは絶景で、減速してもらえるのは嬉しい配慮でした」「ツアーで巡るスポットは、淡路島の魅力に特化したところが多く、日帰りにも関わらず淡路島の魅力を満喫できる旅だった」との感想を寄せてくれました。去年は小豆島への船旅を行ったり、但馬地域のジオパークとの交流企画をうったり、兵庫県当局や淡路島観光協会などのご支援も得ながら、この会社は様々な試行錯誤をしてきました▼そうした試みをするなかで、今私の想いは瀬戸内海への内外の観光客を呼び集める構想へと集約されつつあります。先日も淡路島のホテルで、パシフィックコンサルタンツという企業のコンサルタントと瀬戸内海の観光振興策をめぐって意見交換をしました。これまでの瀬戸内海観光がややもすれば、広島、愛媛、香川、岡山の瀬戸内中心部4県に偏って展開されてきており、兵庫県、山口県あるいは九州の大分県などが埒外に追いやられてきていた傾向があるという点などで一致しました。その結果として、これからは、東、中央、西と瀬戸内海を三つのエリアに分けて細かな観光計画を立てる必要があり、とりわけ東の入り口に位置する淡路島をその突破口にしていこうということになったのです。関西国際空港に降り立った外国人客を、船で淡路島に呼び寄せ、さらに小豆島や直島、豊島など瀬戸内諸島を島めぐりするという企画は面白く魅力的と思いませんか▼こういう企画は、実は一般社団法人「瀬戸内海、創造の海へ」という組織体で実行に移そうとしています。代表には中西進先生についていただきたいと念願しています。万葉集を専門とする国文学者です。かねてより「国生みの島・淡路島」に強い関心を持っておられ、瀬戸内海に日本の原風景を見出すことで、現代日本人が忘れてしまっているこころを取り戻そうとされています。個人的にも私はすっかり中西先生の魅力に取りつかれてしまっています▼今発売中の、総合雑誌『潮』八月号の「シリーズ企画 戦後70年を問う」に、「詩心と哲学こそが国を強くする」という小論文を寄せておられます。この論文における同先生の「日本の政治家は今こそ詩心と哲学の大切さを自覚してほしい。武力に頼る大国主義ではなく、哲学の力、文学の力、詩の力こそがこの国を最も強くするのだ」という結論に至るまでの指摘はきわめて説得力に富んでいます。とりわけ、「現代日本人の日本理解があまりにも浅薄なことに危惧を抱くのである」という箇所や、「日本はアジアの文明をすべて受け取って拒否せず、たくましい創造性を発揮して発展させてきた。その日本文明が、アメリカ型グローバリズムより劣っているという見立ては明らかに誤りである」というくだりがそれです。日本文明とくにその中核をなす日本人のこころを探す旅を、瀬戸内海に求めようという志が私の体内で一段と燃えてきました。(2015・7・23)

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