【5】テレ東記者から大学教授へ転進━━〝友人の変身〟を追う(上)/6-5

 テレビ記者から大学教授へ。企業経営者から健康ラドン浴施設運営を経て映画制作者へ━━今回は二人の友人の大きな夢を載せた興味深い変身ぶりを紹介します。まずは1人目のケースから。(下は10日に)

⚫︎テレビ東京記者から京都科学技術大学(KUAS)教授への変身

大学生の作った工学作品の 陳列ケースの前に立つ山本 名美教授(KUASで5-23)

 僕が現役政治家の頃に付き合った記者は数多いが、女性テレビ記者から大学教授しかも広報センター長兼任という人はこの人しかいない。山本名美さんである。元テレビ東京記者として、人気番組「ワールドビジネスサテライト」の担当やら、ニューヨーク特派員として米大統領選挙などニュース報道取材で名を馳せた敏腕記者だ。その彼女が2年前から京都先端科学大(KUAS)の教授になった。大学生に自らが専門とするメディア論を単に教えるだけではない。創設間もない大学を広く世に知らしめる広報担当としての役割も担う。30年前の若さ溢れる記者から、大学経営の最先端を走るカルチャービジネスウーマンへの変身。先日大学訪問を兼ねて色々と取材させて貰った一端を紹介したい。

 大学に到着して真っ先に学長室へ。柔和な面持ちの前田正史学長から51ヶ国地域より468人(2024年時点)の留学生を受け入れている現状についての苦労談や抱負などを聴いた。世界トップの総合モーターメーカーである(株)日本電産(現ニデック)の創業者・永守重信氏が理事長である大学として、夢をカタチにしゆく底力が垣間見えた。と共に、未来を創る人を育ていく前田学長を先頭にした教授陣の熱意を感じた。テレビ記者の眼差しから、大学人としての責任感に溢れた表情への変化。名美教授の横顔がこよなく眩しく見えた。

 その後、工学部を中心に大学構内を回ったが、学生の能力を引き出すために惜しげなく資金を投げ出す永守理事長周辺の経営陣の姿勢が伺え、興味深い。留学生の多さもあって、脱日本の大学風景を感じた。個人的には学問上の師であった中嶋嶺雄先生の秋田国際教養大学を訪れた遠い日のことを思い出した。東西で並び立つ国際人養成の橋頭堡たれとの思いが、異次元の学生達の姿に重なってくる。

 同日夜にはかつての記者時代の名美さんをよく知るK大のW教授も加わって食事を一緒にした。その場ではいかに名美教授がかつての職場で後輩たちから、畏敬の念を持たれていたかがよく分かった。W教授との会話をそばで聞きながら、遠い昔の彼女しか知らない僕には、不思議な違和感がよぎる。「テレビ人」としていかに彼女が力をつけていったかを思い知った。並々ならぬ努力あったればこその変身だ、と。こうした友人の変身は爽やかだが、国家の狂った変身はごめん被りたいとの話を次にしたい。

⚫︎トランプのアメリカの〝変身〟をどう見るかについてのトーク

 山本名美さんがネットでの番組に登場するというので聴いてみた。「北澤直と椎名毅の『東西南北』」っていう「ビジネスニューススポッドキャスト」のエピソード79号である。タイトルは「トランプ政権の正体を語る』というもの。40分間にわたって実に分かりやすい口調での「変身解説」だった。

 トランプ大統領の出鱈目ぶりは今更言うまでもないが、名美さんの解説を聞くと、改めてその背景が分かってくる。ひとことで言えば、米国の共和党対民主党の対決は、〝ぶれない嘘つき〟と〝頭の良さそうな嘘つき〟の罵り合いに聞こえるというものである。繰り返されるトランプ大統領の嘘は、岩盤支持者にとっては、「貧富の格差の固定化」を壊してくれそうな期待感をそそるに違いないのだろう。

 米国社会の経済的歪みの落差加減が、嘘だと知りつつ一般市民をして信じさせてしまう━━この奇妙奇天烈なメカニズムに対して、彼女は「気持ち的には共感する」との〝切ない発言〟をつぶやいた。

 ハーバード大を始めとする大学という「聖域」にまでメスを入れ込むトランプ大統領のやり口については、名美さんは「言論の自由がこんなに簡単になくなっていくとは衝撃という他ない」と語っていた。豊富な取材体験をベースに、米国のいまを赤裸々に描きゆく彼女の解説トーンに、聴く側の「常識」がガタガタと揺らぐのを禁じ得ない。

 巨大な軍事力と経済力に支えられてきた「自由と民主主義の守り神」・アメリカが狂い出した。この「大国の変身」という現実を前に、同盟国の人間としての苛立ちは募るばかりだが、そう言ってばかりもいられない。打開の方途を探って行きたいものである。(一部修正 2025-6-5)

 

 

 

 

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