先日フジテレビで、読売、朝日、産経の三新聞社の政治部長が集まって、防衛三文書、防衛費増などをめぐる政府与党の動きについて議論している番組があった。ここで興味深かったのは、最後に紹介された視聴者の意見だった。それは3人の議論が、政策というより政治的動きに偏りすぎている、この国の防衛をどう展開するのかの議論がもっと聞きたかったと疑問が示されていたことであった。これは鋭い意見で、司会も3人の政治部長も、その非を認めてはいたが、果たしてどこまで分かっていたか疑問だと私は思う◆というのは、国会でも与党内の議論でもあまり本格的な安全保障をめぐる議論はなされない傾向があるからだ。政策よりも、政局好きなのはメディアも政治家も同じという気がしてならない。それはそれで大事なのだが。例えば、防衛費増については、当初、初めに防衛費枠最初にありきではなく、積み上げが大事──人件費や砲弾にまで含めて何が足りていないか──だとの議論が、国会討論会の場などでもなされていた。しかし、与党内の議論が終わってみると、積み上げ部分についてはあっさり吹っ飛んで、GNP 2%枠やら総額43兆円などの数字だけが飛び交っている。これでは、この金額が高いとか、財源がどうだとかの議論にばかりに国民の関心が向かうのも無理はないように思われる◆今回の防衛費増については、ロシアのウクライナ侵略戦争や、中国の台湾併合への懸念、そして北朝鮮の日本海に向けての度重なるミサイル発射などの三隣国の動きが背景にあることはいうまでもない。これまで、自衛隊が動こうにも動けないほど、実戦で役立たない防衛力しかないことは取り沙汰されてきている。ようやく、隣国の動きが風雲急を告げてきて、腰をあげるように見えるのは嘆かわしい。ここら辺りについて、常日頃から議論がなされ、国民も共有していることが大事なのだが、依然として、安全保障になると、〝非武装的平和論〟が幅を利かせるばかりである◆オールオアナッシング(全てか無か)ではなく、必要な防衛力はきちっと持つことが大事だとの考えに立った議論が望ましい。かつての防衛論議は、野党第一党が非武装平和主義であったため、一歩も進まなかった。今は、そうではない。共産党や令和新撰組が、外交力を強調し、防衛力増には否定的(共産党は政権をとると自衛軍を持つ懸念は否定できないが)であるだけ。立憲も維新も野党の中核が一定の防衛力を持つことに肯定的なのだから、今こそもっとオープンに必要な防衛力論議を進めるべきだ。通常国会での議論に期待したい。公明党については、中国やロシアと政治スタンスが近いなどといった風評があるが、これも商業週刊誌の〝ためにする〟噂話の域を出ない。公明党ももっと自らの立場がいわゆる「対中脅威論」ではないのはなぜかを積極的に語らないと、誤解が広まるだけだと思う。今こそ与党内の議論だけでなく、与野党も、国民も安全保障の大議論を起こすことが大事ではないか。(2022-12-21)