さる16日に閣議決定された「安全保障関連3文書」について考えたい。これをどう評価するかは、もちろんその人間の立場、国際情勢認識によって異なるが、同じグループに属するものであっても捉え方はかなり違うように思われる。ここでは、3文書をどう見るか、日本の防衛を政府与党はどう変えようとしているかを、公明党に寄せられている疑問への考え方も含め、3回にわたって触れてみたい。
●歴史的なパワーバランスの変化への対応
まず、この3文書なるものは、①国家安全保障戦略②国家防衛戦略③防衛力整備計画の3つをさす。これらのうち、①は、従来「国防の基本方針」と言っていたもので、2013年に既に改めている。②と③は、これまで「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」と言っていたものをそれぞれ衣替えしたのである。いずれも概ね10年をめどに見直すとしている。公明党のほぼ60年の歴史のうち、前半3分の2の40年ほどは野党として、これらの防衛の基本原則を批判的に監視するスタンスであった。後半の20年は与党であったため(民主党政権下の3年は除く)、監視するというより厳しく見守る態度だったといえようか。シビリアンコントロールの精神のまっとうな展開を目指した。
そんな役割の変化の中で、今回の改定は約10年ぶりの基本的な安保戦略の見直しと共に、その戦略の展開及びそれに基づく具体的な装備を始めとする防衛力の整備計画を定める作業であった。なぜ今かを、一言で表現すると、「歴史的なパワーバランスの変化が生じた」からである。「ロシアによるウクライナ侵略で、国際秩序を形作るルールの根幹がいとも簡単に破られた」し、「同様の深刻な事態が、将来、インド太平洋地域、とりわけ東アジアで発生する可能性は排除されない」との現状認識によるものだといえよう。
結党以来、初めて国家の統治の根幹に公明党が関わったのは、6年前の「安保法制」の時だったとされる。政策的判断からしてこなかった「集団的自衛権」行使に、踏み切ったからである。「憲法9条違反」との批判を受けたが、公明党的には、「憲法のギリギリ枠内」との判断であった。その枠組みにそって、新たな事態に対応しようと、従来からの「3点セット」を書き直したのが今回の試みである。その意味では、憲法の枠内での第2弾の展開といえよう。(2022-12-24 つづく)