【107】核軍縮どこが前進したかの見極めを❸/5-25

 24日の衆議院予算委員会で、G7広島サミットを巡る問題を中心に内外の諸課題が議論された。冒頭の発言を含めての質疑で、岸田首相は、①各国首脳に被曝の実相に触れてもらい、それを世界の隅々に発信することができた②グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国との関係を深めることに成功した③(ウクライナのゼレンスキー大統領が参加することで)法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、力による一方的な現状変更は認められないという点で認識の一致が得られた──などを大きな成果として誇った。これに対して、立憲民主党など野党は、非核化への道筋が見えないとの被爆者団体の反応をもとに、疑問を投げかけた◆与野党の立場からすればこの相違は予め予測されたことであったが、私にとって残念に思えたのは、公明党の質疑だった。G7として初めて核軍縮に焦点を当てた首脳文書「広島ビジョン」が、公明党が事前に示した提言に符号していたと、評価するというのだが、果たしてそうか。大筋の方向性の一致は当たり前で、どう具体化させるのかについては殆ど見るべきものがなかったというのが正直な受け止め方ではないのか。広島サミットを機に「核軍縮への転換」を、と訴えた(5-17付け公明新聞)ことに、「核軍縮 G7で前進」(5-25付け)とあるが、どこがどう符号したというのか◆提言では、今年11月に開かれる核兵器禁止条約の第2回締約国会合に、日本としてオブザーバーで参加し、核保有国と非核保有国との「橋渡し」の役割を果たすよう主張していた。なぜ、それが叶わなかったのかぐらいはこの場で聞いて欲しかった。核の先制不使用や威嚇を禁じることについても、どう議論が進められたのかは確認すべきだった。こういう議論をすることは与党の立場からも当然あって然るべきだと思う。それ以外にも、公明党の提言で重要なものが数多くあったのに、それが殆ど反映されていない。にも関わらず、「符号した」「重なる」内容とのやりとりで済ましてしまうのは、勝手に自ら設定したハードルを下げて満足しているようなものではないか◆グローバルサウスとの関与についても、会議の中身は一般的には伝わってきていない。予算委員会はそれを聞き出す絶好の機会のはず。ロシアとの距離においてG7と異なる位置にあるインド、ブラジルを始めとする各国と、どういう議論をしたのかも聞き出して欲しかった。単にウクライナへの支援だけで事足れりとするのでは停戦どころか、戦争拡大にしかならない。複合的な視点から現状を見つめ、打開への道を求めるべきなのに、一方にのみ目を向ける岸田首相に苦言を呈することさえなかったのは、禍根を残すという他ない。(2023-5-25  この項終わり)

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