岸田首相にとって今回のサミットは、各国首脳を「広島平和記念資料館」に招き入れて、改めて核の悲惨さに共感を抱いて貰ったことによる手応えは大きいに違いない。とともに、ウクライナからゼレンスキー大統領がやってきて直接G7メンバーと対話出来たことも西側の結束を確認出来たものとして大きな成果とみられよう。ただ、これらは共にパフォーマンスの領域をでないとも言える。核の廃絶、削減に向けて一歩前進をしたとはいえず、ウクライナ戦争も停戦、終結に向かって前進したといえない限り、会議前とその風景は全く変わっていない◆被爆者の代表たちは口を揃えて「失望した」ことを強調していたし、ウクライナ戦争については、具体的には米国によるF16の供与、訓練の機会など戦争拡大に向けての動きしか見られなかったのは、当初から予測されたこととはいえ、残念の極みであった。とくに、創価学会インタナショナル会長の池田先生が4月27日付けで『危機を打開する〝希望への処方箋〟を」とのG7広島サミットへの提言をしていたが、全く反映されていなかったことも◆その中では、❶2月の国連総会での決議に盛り込まれた〝重要インフラや民間施設への攻撃の即時停止〟を実現した上で、戦闘の全面停止に向けた交渉を市民社会の代表がオブザーバー参加する形で行うこと❷G7の主導で「核兵器の先制不使用」の誓約に関する協議を進めること──なども呼びかけていたのであるが、顧みられなかった。「被爆地・広島は貸座席ではない」とのコメントが被曝関係者から発せられていたが、宜なるかなとの感は強い◆今回の会議には、インドをはじめ5カ国のいわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々が招待国として参加していた。この中にはロシアへの経済制裁などにおいて、西側とは一線を画し中立的立場をとるインド、ブラジルも含まれ、注目された。特にインドは今年のG20の議長国であり、存在感は大きいのだが、そうした国との詰めた意見交換があったのかどうか。自分達の陣営に引き摺り込もうとするだけでなく、どうしたら、戦争を終結出来るかをめぐっての議論が重要だと見られたが、それがなされた気配は感じられない。(5-23 つづく)