自衛隊の存在や役割の明記をめぐる議論をしよう

今年も憲法記念日がやってきました。私は現役のころに公明党の憲法調査会の座長をやっていました。その当時と今と憲法をめぐる状況は全くといっていいほど変わっていません。「改憲」をライフワークにするといった姿勢の持ち主が首相をやっていますが、それはあくまで「姿勢」であって、道筋がついているわけではないのです。自民党は結党以来その党是に「改憲」を掲げてきたわけですから、昭和30年いらい60年余の実態は、およそ看板倒れもいいところだと思います。首相が焦る気持ちはわかります▼私はいろんな場面で率直な物言いをしてきたことで知られていました。意味のない建前論はあまり気にいらなかったからです。憲法絡みのことで思い起こすのは中曽根康弘元首相と一緒にある会合に出た時のことです。公明党の憲法をめぐる態度について言えというので、「公明党の立場は加憲(カケン)です。改憲(カイケン)とは一字違い。一字だけ取ればいいのですから、改憲ももう一歩です」と述べました。中曽根さんはじめ自民党の面々が大笑いならぬ、大苦笑いをしていたのが印象的でした。これはジョークが少々きつ過ぎたかもしれません▼池田SGI会長が毎日新聞のコラム『発言席』に、憲法に環境権を導入することを提案されてから随分と歳月が流れました。あの時の鮮烈なインパクトは忘れられません。ちょうど米国に議員派遣で行っていた旅先のこと。のちに防衛庁長官として名を馳せた久間章生さんが(この旅の一行の団長だった)、興奮ぎみに「赤松さん、池田先生が改憲に踏み切る発言をされてるよ」と言って、新聞を差し出されたのです。池田会長は「環境」の重要性にかんがみて、憲法が触れるべきだとされたのです。もちろん、憲法9条を変えるなどということではありません。公明党は、全面的改憲派の自民党や口先だけの護憲派の共産党と違って、真実の意味での護憲政党でした。それが、この寄稿文によって、加憲という名の「緩やかな改憲」路線に舵を切り替える示唆を受けることになったといえましょう▼昨3日のNHK総合テレビでの9党の代表による討論会で、北側一雄公明党副代表は、9条堅持を訴える一方で「自衛隊の存在や役割を憲法上、明記したほうがいいという議論はあってもいい」としました。また、昨年、平和安全法制を整備して9条のもとで許容される自衛権行使の限界を明確にしたのだから、「それを超えてまで自衛権行使をやろうとすれば、改正は必要だが、当面、必要はない」とも述べました。北側さんが中心になって作った安保法制が限度ギリギリの憲法解釈だということに、私もまったく異論はありません。だが、私はかつて党内安保議論で、自衛隊の位置づけを明記し、国際貢献などの役割を9条3項としてつけ加えるべきだという議論をささやかながら展開したものです。それゆえ、内外であまり議論が行われていない状況には不満です。憲法9条をめぐってはもっと建設的な議論がなされるべきです。公明党ももうそろそろ「あってもいい」などといったなまぬるい言い方から脱却すべき時ではないでしょうか。(2016・5・5)

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