「米中人権論争」余波ー公明党の対中態度を巡って【上】/4-16

●米中外交論争と参議院決算委での公明党議員の質疑

米国バイデン大統領の誕生後、初めてとなる米中両国の外交担当者によるアラスカ・トップ会談が3月18日に行われた。ここでの衝突ぶりは、ある意味世界史上初の対決とも言えるもので、その報道に接して実に面白かった。戦争は御免被るが、論争は大歓迎だ。とりわけ「人権」を巡っては、この両大国共に脛に傷を持つ以上の弱みがあるだけに、非難の応酬は大いに興味をそそられた。

それから約3週間後の、さる4月5日の参議院決算委員会。公明党議員の質疑をNHK テレビの放映で見ていて、訝しく思わざるを得ない場面があった。予定される日米首脳会談に関連して、同議員が「人権問題」に言及したので、当然ながら米中の対立に踏み込み、日本政府のスタンスを確認するものと期待した。ところが、さにあらず。彼は、「すべての国に人権は守る義務がある普遍的な規範である。ミャンマーだけでなく、日本の近隣諸国を含めてすべての国はこの規範の下にある」と当たり前のことを一方的に喋っただけ。ウイグルにまつわる中国にも触れず、ましてや人種問題の米国にも言及はなく、質疑がなかったのである。

●日本での「マグニツキー法」への動き

このテーマを巡っては、日本版マグニツキー法(深刻な人権侵害を行った個人や団体に対して、資産凍結や入国制限を可能にするロシア発の制限法)を作ろうとの動きが国会内にある。3月30日には、偶々超党派の会合が持たれた。年初の結成準備会には公明党からも発起人が出席していたが、この日は参加者はゼロだったという。これについては後日、ほぼ同主旨の別の議員連盟が結成され、それには公明党から代表者が出たようだが、舞台裏の動きは詳らかとしない。

実は山口那津男公明党代表が同じ日の記者会見で、「人権を巡る欧米と中国の対立」について記者から訊かれて、以下のように答えている。(公明新聞3月31日付けから転載)

1)米国との同盟関係を強固にするために基礎を固めると共に、交流の厚い中国との関係も十分に配慮しながら、国際社会での摩擦や衝突をどう回避するかが重要だ。国際的な緊張の高まりを回避、または収められるよう積極的な対話を日本が主導すべきだ。

1)(日本政府の対応について)人権の保障には対応しなければならない。外国の人権侵害については、日本が制裁措置を発動するとなれば、我が国が外国の人権侵害を認定できる根拠と基礎がなければ、いたずらに外交問題を招きかねない。慎重に対応する必要があるのではないか。

1)(国内で提起されている人権侵害制裁法「マグニツキー法」について)日本政府に海外の人権侵害の状況を調べさせ、制裁措置を発動できるようにする法律だと受け止めている。慎重に検討すべきだ。

この山口代表の発言の捉え方への賛否の見解の披歴もなく、先の公明党の質疑が終わったのは妙に気になって仕方がない。(2021-4-16 以下つづく)

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