●「これでは票が逃げる」という声
先の記者会見の報道と相前後して、ネットでは、同代表の中国テレビ局の過去のインタビュー場面が流れた。中国の「一帯一路」構想への理念に賛同し、協力したいとの意向を表明したもののようである。私の知人らからは、「これでは公明党への票が逃げる」という山口批判の声が届いた。
対中関係について世論は、同国の経済力の拡大や国際法を無視するかの如き振る舞いが顕著になるにつれ、厳しく批判する向きが強い。私自身も中国の「傍若無人」と見ざるを得ない姿勢には苦々しく思うことがしばしばである。「一帯一路」礼賛と見られかねない山口発言にはいささか驚いた。もう少し発言に陰影を加えてもよかったのでは、と正直思った。
ただ、先のアラスカでの米中詰り合い外交対決に接して、改めて「どっちもどっち」との印象を持つに至っており、中国への人権批判を口にするなら、同時に対米批判も忘れてはならないとの視点も持つ。そうした意味で、要らざる国際的摩擦に繋がる対中批判を煽るべきではなく、米中融和に向けて、日本が積極的な役割を果たすべしとの山口代表の態度は理解出来なくはない。
●佐藤優氏との対談本に見る中国観
公明党は周知の通り、日中国交正常化に尽力し、長きにわたって、両国の友好促進に向けての役割を果たしてきた。同代表もその伝統の上に立って、野党外交から更に拡張させた与党外交の一翼を担ってきている。では、具体的な課題解決にあたって、どのような中国観のもとに臨んでいるのか。最新の話題の著作のうち、まずは佐藤優氏との対談本『公明党 その真価を問う』から、拾ってみた。
例えば、「コロナ禍」を巡っては「中国が新型コロナ蔓延の発生源であることは、紛れもない事実です。その困難を克服するために、中国が先に経験した記録や知識、技術をどんどん世界に役立ててもらわなければなりません。ワクチンや治療薬の開発という部分でも、中国の知見は重要です。(中略)中国が世界と共に手を携えて歩む。その姿勢をしっかり保てるように、日本は中国と行動をともにしていくべきなのです。」と、良識的な見方を発信している。
また、米中関係についても、「トランプ政権の4年間を通じて米中関係が冷え込む中、21世紀の『第二の冷戦』の当事者になるようでは、中国自身も生き延びていけません。周辺諸国に協調を呼びかけ、中国が『この指止まれ』でリードしても、みんなが中国側になびくこともないでしょう。国際社会の中でやるべきこと、みんなが求めること、みんなが納得することを、理解を得ながらやっていく。そうした行動と振る舞いが、これからの中国にとって大事です」と、これまた普通の穏健な見方を示している。
では、何かにつけてうるさい評論家・田原総一朗氏との対談本『公明党に問う この国ゆくえ」ではどうか。次に見てみよう。(2021-4-21)