さる1月11日に池田大作創価学会SGI会長がウクライナ戦争に対し、世界に向けて「民衆こそ歴史創造力の主役」と題した「緊急提言」を行った。そこでは「国連が仲介する形で、ロシアとウクライナなど主要な関係国が外務大臣会合を早急に開催し、停戦合意を図る」ことを、提案したのである。外交評論家の佐藤優氏は、西側にありながらも「殺傷能力を持った武器を提供してきていない」日本は、ロシアとウクライナの中に立って停戦をリードする資格を持った唯一の国であることを強調してきている。2月初めには、「池田氏の提言が現実政治に影響を与える要因であるにもかかわらずマスメディアが注目しないのは不思議だ」(毎日新聞Webサイト『政治プレミア』2-8付け)とする一方、「生命尊重、人間主義の基本的価値観を創価学会と共有する公明党には政府内で停戦合意に向け、岸田首相が動くようにぜひ働きかけて欲しい」(琉球新報2-4付け)と訴えてきている◆公明党は、既に1月26日の衆議院本会議の代表質問の際に、石井啓一幹事長が「ハイレベル会合を早急に開催し、停戦合意を図るなど、平和の回復に向けた本格的な協議を進めるべき」で、「日本が国際社会と緊密に連携を図り、主導的な役割を果たすべきだ」と、主張している。しかし、岸田首相は答弁せず、無視する格好になったままである。このあと、参議院での山口那津男代表の質問では二の矢を放たず、予算委員会でも誰も取り上げてはいない。そういうことを知った上で、佐藤氏は要求しているものと見られるが、公明党が動く気配はない。先日の衆院予算委員会での赤羽一嘉質問は、与党として復活したこの10年で、最も激しく自公政権の国民生活への対応の弱さを指摘するものだった。刮目すべき追及だったと高く評価する。あの勢いとトーンでウクライナ戦争の停戦に向けて岸田首相の尻を叩いていたら、と切に思う。西側のG7議長国として、どっぷりウクライナ支援に浸かった日本の首相に対し、与党のパートナーがそういうことを望むのは、〝無理筋ねだり〟なのだろうか◆時あたかもトルコ、シリアを襲った大地震で4万人を超える人々が被災し犠牲となった。それこそ、「戦争をしている場合ではない」「共に支援に当たろう」と、せめて「休戦」を呼びかける一大チヤンスであった。東日本大震災始め世界に冠たる地震大国であり、福島第一原発事故を引き起こした日本こそ、トルコ(地震多発国家)、ウクライナ(チェルノブイリ原発事故国)との悲哀を共有できる立場である。しかし、それももうタイミングを逸してしまった。恐らく公明党の中では、そうした提案をすべきだとの声があったはず。だが、表には聞こえてこない。連立与党として自民党への忖度が過ぎる。これでは不甲斐ないとしか言いようがない◆先日、NHK テレビ『混迷する世界』第9回「ドキュメント国連安保理」で、国連の機能不全ぶりをつぶさに放映していた。懸命に合意を図るべく裏舞台で汗をかく非常任理事国・日本の外交官の戦いぶりが注目された。しかし、「過去にアフリカを支配してきていながら、今は身勝手な行動をとっている」西欧を非難しつつ、ロシアの肩を持つモザンビークの代表の発言が強く印象に残った。その場面を見ながら、ウクライナの出来事には共感しても、シリア、ミャンマー、アフガンなどの苦境には今一歩目が向かない世界、日本の大衆の「想像力」の偏頗と貧困さに思いが及んだ。停戦に向けて国際世論の「創造力」の現状と、「地球と人類の行く末」が大いに気になる。(2023-2-24)