コロナ禍で閑散としていた観光地が一転、どこもかしこも大賑わい。GWの様子を報じたテレビ番組は判で押したように、旅行関係者の喜びと地元の嘆きのツーセット。8日のNHK「クローズアップ現代」では、オーバーツーリズムの問題点を洗い出していました。沖縄の石垣島や竹富島では、コロナ禍でいなくなった〝従業員探し〟に苦労している場面や、丸ごと出されたゴミを仕分けし直す小売店の皆さんの悲哀がしのばれました◆そんな折、「〝観光〟は〝立国〟か」と、いわくありげなタイトルのセミナーがあると知り、わざわざ京都まで行ってきました。主催は、KUAS(京都先端科学大学)。今年初めて卒業生を出したとのことですから、開学4年目の新しい大学です。5月10日夜のこと。会場が比較的落ち着いて見えた京都駅前だったのでほっとしました。なぜ、このセミナーに参加したかというと、実はかつて公明党の番記者だった山本名美さんがこの大学の教授に就任、このセミナーのモデレーターを務めると聞いたためです。親しく付き合った記者さんが大学教授になるというのはそう珍しくはないのですが、女性では初めてです◆カー教授の講演は実に面白いものでした。とりわけ、観光地における〝艶消し〟そのものの看板のオンパレードをパワーポイントで見せられたのは、こちらが恥ずかしくなるほどでした。彼の講演では、駐車場の場所設定などは便利さを追うことでなく、むしろ不便さが大事だとか、予約制の導入や入島料を取るなど、客を選ぶ方向がトレンドだと知りました。観光客も量より質が求められる時代だと改めて気付いたしだい◆この日一番収穫だったのは、「管理」こそ観光のポイントという一点でした。ただ闇雲に観光客を招き入れていると、立国どころか亡国になるのは目に見えているのです。どこの観光地が飽和状態か、まだゆとりがあるかをキャッチし、観光客に選択させる仕組みの確立──「管理」が最優先だということなのでしょう。こうした話を聴きながら、人口の東京の一極集中と同様に、観光客の京都一極集中をどう分散させるのかなどに思いがおよびました。ただし、これは難題。コロナ禍の3年に国は対応の努力をしたのだろうかと思いつつ、帰路についた次第です。(2023-5-12)