京都、金沢、松江の3つの都市に共通するものは何でしょうか?いずれも「茶の文化」が定着しており、それゆえ和菓子の町だということのようです。というものの、それを私が自覚したのはつい最近のことで、高校の後輩で弁護士をするT君から、食文化の奥深さと共に聞かされてきたからです。偶々、先週末13日に私が少し関わるメタバース導入PTを目指す一般社団法人の会合が松江であるため、彼と翌14日に合流して、束の間の「松江紀行」を試みることにしました。この地を今まで訪れたのは僅か2回ほどだけの私と、この地を熟知した案内人との道行きは、格別なものになりました◆まずは昼飯から。客がいつも列をなしているという人気の蕎麦屋「神代」に。この日は20分ほどで入れましたからまずまず幸運。窓越しに増える人列影を見やりながら銘酒「豊の秋」を傾けつつ啜る蕎麦の味は格別でした。ついでに夕飯先も披露しますと、橋のたもとの居酒屋「山一」。カウンターに座って、おでん、しめ鯖と飛び魚のお造り、喉黒をお酒と共にいただき、山盛りのしじみ汁を食しました。さあ帰ろうと、後ろの席を見るとビックリ。4組8人の客がずらりと前の方向に揃って足を投げ出して、皿のものを思い思いにつついておられるではありませんか。狭き場所ゆえの気の毒な姿の〝食卓四重奏〟に笑いを堪えて店を後にしました◆この昼と夕の食事の間に、訪れた先は、明々庵、松江歴史館、松江興雲閣、松江城。なかでも、7代目松江城主・松平治郷(不昧公)が愛用した茶室だという明々庵の落ち着いた佇まいとおうすの味、そして松江城天守閣からの眺めは忘れ難い趣きがありました。お城はついついどこに行っても、我が故郷の姫路城と比較してしまいます。天守閣の豪華さは白鷺城に勝るものは天下にないとはいえ、お堀の立派さと借景としての宍道湖は完全に松江城の方に軍配を上げざるを得ないと言えましょう。夕方6時半からの宍道湖サンセットクルーズでは、見事な夕陽の落ちゆく姿とご対面出来ました。色んな場所で夕陽は見る機会がありますが、格別見事なものに見えたのは、水平線の長さにあるのかと。また途上にある嫁が島の松の木の渋さ加減が抜群でした◆翌朝は、列車で20分ほど東にある安来市の日本一の庭園という「足立庭園」に。かねて名声を聞き及んできたものの、残念ながら失望しました。てっきり庭園内を散策出来るものと思いきや、ほとんど窓ガラス越しで見るだけ。これではいくら日本一と言われても有り難みなし。ぐっと狭いけれども、姫路城脇の考古園の方が未だましと思ったしだい。お昼は、松江に戻り皆美館で。湖畔の料亭旅館で、数多の文人が好んだというだけあって、ミニ庭園も中々の雰囲気でした。勿論料理も◆ついこの間京都で観光学の講義をアレックス・カー先生から受け(前回紹介済み)、オーバーツーリズムのための管理学の必要性を学んだばかりですが、京都、金沢と違って松江は未だゆとりがあるように見受けられました。お土産のお酒と和菓子を前にして、過ぎ去った地を思い起こしつつ、ちょっぴりと幸せを感じています。(2023-5-25 一部修正)