“道を究める”ことの尊さを”志”研修会で学ぶ

上甲晃さん率いるところの志ネットワークというグループをご存知ですか?上甲さんとは松下幸之助氏の側近で、かつて松下政経塾の塾頭ともいう立場で若き日の野田佳彦元総理らを訓育された人物です。私はこの人の存在を高砂商工会議所の会頭でソネックという建設会社の渡辺健一会長から聞いていました。ずいぶんと前になりますが、今の日本で心底から世直しを考えて、人々に働きかけているとてつもない人物が上甲さんだと聞かされたのです。その著作も読み、機会あらばお会いしたいものと念じ続けていたのですが、遂にこの二日に実現しました▼年に一回、全国に開催地を移しながら会員の親睦や研修を行っているとのことですが、今年は二泊三日で姫路に100人ほどの皆さんが来られたのです。『志ネットワークin播州』との名目で、「城下町に今も生きる匠の技と生活‥‥古き良き日本の伝承を期待して」が今回の大会のテーマ。姫路駅前の地場産ビルで開催された第一日目の大会に私も参加させていただきました。皮革研究家、刀工、塗師、時計技能士、仏壇工芸家、甲冑師・鍛冶職人の六人が次々講演。おひとり40分づつ四時間余りもの長い時があっという間に過ぎました。この地で四半世紀もの間、政治に携わってきていながら、直接面識があったのはお二人だけ。あとの皆さんは初めてお話を聴くという始末。そんな私でしたが改めて伝統工芸の大事さ、日本文化の奥深さを思い知らされる素晴らしい機会となりました▼冒頭の柏葉喜徳さんの皮革の歴史の話は実に聴きごたえがありました。日本最大の皮革産地といっていいい姫路に住みながらも知らないできた様々の皮にまつわるお話。とりわけ姫路独自の白なめし皮に関して知識を新たにできたのは収穫でした。塗師の砂川隆、仏壇工芸家の原田眞一郎両氏の話も興味深いものがありました。灘のけんか祭りにおける主役たる屋台をいかに荘厳するか、また名城あるところに仏壇工芸の伝統ありとの秘話を、八代目から聴いたのも凄味がありました。さらに甲冑師・鍛冶職人として日本でも唯一の存在たる明珍宗理氏は、火箸を使って見事な音色を奏でる風鈴の製造に取り組んでいる話をさまざまに展開してくれました。また彼の次男宗裕氏が刀工として大なる存在を築くまでの苦労話は胸打つものがありました。時計技能士の永濱修氏は阪神淡路大震災以降、各地の小学校などで壊れた時計の修理を通じて培った「命の絆」の話を披露してくれました。涙を誘わずにはいられない中身の濃い話に感動したものです▼すべてが終わった後の総評の中で、上甲さんは以下のような意味のことを述べました。人生において何を極めるかは大事なことです。地位を究めることに取り組んでも、地位を離れるともぬけの殻になることがしばしばでしょう。財を求めても所詮むなしいものです。それらに比べて、道を究めようとするひとたちは歳をとって、いやまして輝きを増すものです。歳を重ねての値打ちは、より真理に近づくことにあるといえましょう。今日の六人の方々の話、とりわけ大先輩の話には確かなる聴きごたえがありましたーさすがと思えるまとめ方でした。絵画、音楽など芸術に打ち込み、「我を忘れるほどの時の経つことを忘れるものが永遠の時を持つことに近づく」というのが私が最近感じていることなのですが、この日の伝統工芸の継承に取り組む人々の講演を聴いて、全く同じ思いを抱くことができました。終了後には懇親会がありました。志ネットワークの皆さんが、いかに世のため人のために尽くすことに、熱い思いを持っているかを知ることができて、大いに感激したものです。結成20年の節目を明年迎えられるといいます。全国のリーダー・上甲晃ご夫妻、姫路の牽引車・渡辺健一ご夫妻に感謝するとともに。今後のご活躍に大いに期待したいものです。(2015・10・7)

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