【116】「自公連立の今」に欠けている視点は何か━中北浩爾中大教授の分析に見る/8-9

 先日、中央大の中北浩爾教授への日経新聞論説フェローの芹川洋一氏のインタビュー番組(日曜サロン)「ギクシャクする自公関係」(8-6)を聞いた。さらに、その後直ぐ中国新聞に掲載(8-8)された同教授の署名入り記事「揺れる自公の信頼」を読んだ。共に、聞き応え読み応えある内容だった。この2つでの中身を要約すると、こうだ。自公政権に代わるもう一つの連立の選択肢が出来ることが最も望ましいとした上で、自公の枠組みの信頼関係の動揺がそれを促すか、それとも政治が混乱状態に陥るかの分岐点にあるという捉え方である◆中北氏は、自公政権に代わりうる選択肢は出来ないだろうとの見方であるが、この見立てに便乗して自公両党が、「安定か混乱か」との選択肢を国民有権者に提示する方向に進むことが想定される。確かに仮に野党による連立が成立したとして、待ち受けるものは混乱であることは火を見るよりも明らかだ。しかし、自公勝利が決して政治の安定をもたらさないこともまた、これまでの結果が証明している。「混乱」ではないものの、実は「停滞」をもたらしていることに気づく必要がある。ではどうすればいいのか◆私は、今この時期に総選挙をせずに、与党両党が政権運営における課題や国家の進みゆく方向をじっくりと協議し、合意を得て行く「政権基盤の強化」の努力をすべきだと考える。これまでは、双方がぶつかるテーマは深追いせず、棚上げしてきた傾向が強い。例えば「憲法改正」、外交安保政策における対中関係や軍事力増強さらには財政運営と消費税率問題、原発依存を含めたエネルギー問題などこの国のかたちに関わるテーマの数々である。右傾化する国の方向にブレーキをかけたり、国民生活向上に向けてどう仕組みを変えて行くのかについても双方が相手に忖度して躊躇するのも度を越すと、曖昧な政策選択の持続にばかり繋がり、長期停滞をもたらしてきていると言えないか。そうしたことの蓄積が日本の「失われた30年」の現実に直結していると言えなくもない◆こうした視点による「連立の強化志向」がないまま、安定ばかりを強調し、「選挙互助連立」に安住していると、長期停滞を免れない。維新がその間隙を突いて伸張しよういる。馬場伸幸・維新代表の「第二自民党」論に与野党とも冷淡だが一般有権者の受け止め方はどうか。その方向性に安心をもたらす意味で、好意的に受け止める向きも強いように思われる。自公連立に代わってのもう一つの選択肢としての「自公維連立」、あるいは「自維連立」へのデモンストレーションに、私には見えて仕方がない。(2023-8-9)

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