戦後78年目の8月6日「広島原爆の日」を迎えて、平和記念公園での式典が注目されました。G7の首脳が集結して行われた先のサミットで、各国首脳が被曝の実態を被曝記念館でつぶさに見たことに加えて、海外からの閲覧数が前年比5倍増(4-6月)になるなど、その発信力が高まってきているからです。私自身は個人的に、岸田首相が何を言うかに関心を寄せました。しかし、結論はゼロ。全く何も言わないに等しい体(てい)たらくでした◆むしろ、小学校6年生の男女2人の子どもたちのスピーチの方が聞かせました。何より2人は原稿を見ないで、暗唱して喋ったのです。例年そうなんでしょうが、式典の挨拶はノー原稿に限ります。原稿を読み上げるのは興味半減です。首相に全部原稿見ないでやれとはいいません。せめて冒頭部分だけでもそらんじて言って欲しかったと思うのです。彼は、テレビで見てる限り、式典のあいだ一貫して厳しい表情でした。そりゃあそうでしょう。聴く人たちの想いが分かってるだけに当然です◆「核抑止論は破綻した」との歯切れ良い広島市長の挨拶に比べて、何故にそうはいかないのかについて、G7の直後くらいはせめて弁明する率直さが欲しいと思ったのは私だけでしょうか。かの首脳声明での「広島ビジョン」に対する非難が強かったあとでの広島での挨拶だけに、何ら触れないのは全く情けないという他ありません。とりわけ、核兵器禁止条約の第2回締約国会議へのオブザーバー参加についてさえ、ノーコメントだったのには驚きを禁じ得ませんでした◆同じ日の記者会見では、「国の安全保障を万全にし、同時に現実を『核兵器のない世界』という理想に近づける。このロードマップ(行程表)を示すのが政治の責任だ」と反論したと伝えられているのですが、反論になっていないというべきでしょう。行程表なるものの一部でも明らかにし、オブザーバー参加がなぜできないのかを表明すべきだったと思うのです。さて、明後日の長崎での挨拶も同じなのでしょうか◆一方、山口那津男公明党代表は、同じ日の同地での会見で、核保有国と非核保有国の橋渡しをする役割を一歩一歩進めていくべきだと述べる一方、第2回締約国会議へのオブザーバー参加を目指すよう促しました。公明党も核廃絶はまさに党是とも言うべき生命線です。それを連立20年も超えているのに、相変わらず何も変えられないままというのは、情けない限りです。私自身2012年まで、その任(外交安保調査会長)にありながら、出来得なかったことを恥ずかしいと思っており、それを棚上げして、あえて仲間たちに注文をつけさせて貰います。(2023-8-7)