先日の山口公明党代表の訪中、訪韓のニュースはタイムリーな出来事でした。とくに訪中については、国際政治の動向に関心を持つ多くの真面目な人たちを爽快な気分にさせました。安保法制に対する「戦争法案」などというためにするレッテル張りを覆す、きわめて大事な外交攻勢だったからです。中国を一方的に敵視するのではなく、外交関係を円満に培っていくためにも。ところが、公明新聞などの報道ぶりは別にして、一般紙ではほとんど取り上げられませんでした▼なぜなのか。どうしてメディアは山口訪中をもっと大々的に取り上げないのか。習近平国家主席と会談をしたのに、との疑問や不満の声を私も幾つか聴きました。公明党が軽視されているからではないか、と懸念する向きもありました。安倍首相の不人気もあり、その親書を携えていくこと自体に、あえてメディアが無関心を装う形をとっているのではないか、との見方もありました。私はその理由を北京に駐在する親しい某社の特派員に訊いてみました。すると、まったく同じタイミングで楊元外交部長(ようけっち)が急きょ東京に飛び、谷内正太郎国家安全保障局長や、安倍首相自身に会ってしまったので、山口訪中の意味がなくなってしまったからだというのです▼加えて中国が主催した「シルクロードアジア政党会議」に、日本の与党代表を出席させるべく公明党が利用されたというのが本当のところだろうというのです。いかにも報道機関の記者らしい見方です。ニュース性から言えば確かに親書の意味は半減しました。また中国も、かの国らしい巧みな外交戦術のなせる業かもしれません。ただ、「戦争法案」との一方的な誤った見方を振りまいておきながら、平和構築に向けての信頼醸成への努力をまっとうに取り扱おうとしないのは問題が多いと言わざるを得ません▼安保法制よりもやる事があるだろう、と指摘していたメディアにはそれに呼応する動きを公平に追い、読者に提示する責任があると思うのです。尤も、一般紙の報道姿勢に一喜一憂するのではなく、ここはわが機関紙・公明新聞の威力を信じ、活用するチャンスだと受け止めるべきでしょう。早速、識者による山口訪中を評価する記事も寄稿され紙面を飾っています。(2015・10・23)