【150】信頼回復は大衆への「説明」から━━「軍事輸出」に歯止めかけた公明党質問/3-14

●公明質問に一条の光が射す感

 自民党の派閥による裏金疑惑によって、政権への不審が底知れぬ広がりを見せている中で、一条の光が射した感がします。13日の参議院予算委員会での、自公間のやりとりを聞いていてしみじみ感じました。西田実仁氏の「国際共同開発した防衛装備品(軍事機器)」に関する質問に対して、岸田首相が第三国への移転(輸出)について、個別案件ごとに閣議決定をするなど、慎重かつ厳格に対応すると答弁したのです。この問題の経緯を見るにつけ、自民党と公明党という政権与党の政治姿勢の違いを感じざるを得ません。安全保障案件について、自民党は幅広い国民の声を重視するよりも、国益重視の観点から、ことを急ぎすぎる傾向が強くあるように思えます。

 そもそも一昨年の暮れに、英国、イタリア両国との間で、取り決めをした際には、日本からの防衛装備品(次期戦闘機)の第三国への移転(輸出)などといったことは、含まれていなかったのです。それをあたかも当然の前提として、次の段階にスルスルと進ませようというのは早とちりのそしりをまぬかれません。公明党はそこをしっかり捉えて、議論を国民注視の場に引き戻しました。大事な問題であればあるほど、時間をかけてじっくりと説明することの重要性を改めて認識して、全てこの調子で行って欲しいなと思ったのは私だけではないと思います。

●国民世論の反応への注視

 西田氏が「なぜ22年末の方針を変更するに至ったのか」「なぜ次期戦闘機を第三国に輸出する必要があるのか」を岸田首相に説明を求めたことは、痒いところに手が届く聞き方でしょう。ロシアとウクライナ、パレスチナでのイスラエルとハマスとの間などでの事態が〝血まみれ化〟している時に、国民の不安と懸念は、そことダブって見えるのです。ことに精通した専門家から見れば、それとこれとは違うと自ずと分かることでも、一般の国民には分からないのです。まわりくどくても、そこを分るように説明せよと求める姿勢こそ、庶民大衆の党・公明党の真骨頂だと思います。

 国家の防衛というテーマを巡って、イデオロギッシュな観点から、まず反対ありきで、政府を追及するやり方はかつての国会で見飽きた、いや今も、一部野党の常套手法です。それを国民の理解に合わせて、丁寧に一緒に考えるのはとても大事なことです。国会での議論を経て、明らかに世論調査結果に変化が見えています。それを西田氏はパネルで説明していました。勿論、〝ポピュリズムに堕す〟ことは慎まねばならないことは当然です。時と場合によっては、政権は国民の声を乗り越えて突き進むことがあるかもしれません。ですが、一つひとつの局面で、世論の動向を押さえる必要はあるのです。

●二重、三重の限定条件付き

  同首相は、先の質問を受けて、今回の運用方針の見直しに関して、「改めて閣議決定として政府方針を決定したい」と述べると共に、「将来、実際に次期戦闘機をわが国から第三国に移転(輸出)する際にも、個別の案件ごとに、閣議決定を行うことを盛り込み、移転(輸出)を決定する前の、与党への協議が確保されるようにしたい。いわば『二重の閣議決定』という、より厳格なプロセスを考えている」と発言しました。

 加えて、首相は、質問に答えるかたちで①第三国移転(輸出)の対象は次期戦闘機に限定する②移転先(輸出先)は、「防衛装備品(軍事関連品)・技術移転協定」の締結国に限定する③現に戦闘が行われている国に対して移転(輸出)は行わない──といったいった主旨の答弁をしました。これは今後、「三つの限定」として捉えられていくものと想定されます。平和国家と自他共に認められ、それをまた望み、支持するのなら、政権も国民もそこにこだわり続ける必要があるでしょう。防衛関連で大事な原則がまた一つ付け加わったと考えられます。

●これで終わりではない

 これからそれぞれの党内で合意への最終的な議論が行われます。われわれ有権者としても、これで終わりではありません。輸出を「移転」に、戦闘機を「防衛装備品」と言い替えている、為政者の本心(公明党は違うはず)を見抜いた上で、冷静で柔軟な眼差しで対応をする必要があるのです。これは言いがかりをつけているのではありません。「政治」の言葉遣いの裏に潜む狙いを、いい加減に見過ごしてはならないと思うのです。公明党は何でも反対、あるいは全て賛成ではなく、是々非々をリアルにクリアにしていく政党だと、議員も、大衆も認識していくことが大事だと考えるからです。

 国民大衆への『説明』という点に絞りますと、足らないことがいっぱいあります。今回のような「戦争と平和」に直結する問題だけでなく、なぜこの30年ほどの間に、貧富の差が激しくなり、庶民大衆の生活が厳しくなったとの実感がするのかなど、「大衆の暮らし向き」に関する問題をめぐっても、国会で「説明」を求めて欲しいと思います。公明新聞はこのところ、一段とわかりやすい紙面作りをしていて頼もしい限りです。さらに、その手を緩めず、与党同士であっても、自民党への厳しい眼差しに立った論議が必要です。

 私はこれまで、公明党が自民党と政権を共にするのは、色々問題はあるものの、他の野党と比べて「よりマシな選択」だからだと言い続けてきました。だからこそ、なぜ私たちの生活がより良い方向に変わらないのか、自公政権とはどういう国に日本をしたいのかとの根本のテーマについても説明への努力を求めたいと思います。(2024-3-14)

 

 

 

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