【149】安倍派5人組のひとりからのお詫び状/3-5

●安倍側近の毀誉褒貶

 私の住む地域選出の衆議院議員(前経産大臣)である西村康稔さんから封書が届きました。派閥の政治資金パーティをめぐっての裏金問題で疑惑の渦中にあり、つい先日も衆議院政治倫理審査会の2日目のトップで釈明し、同僚与野党議員から質問を受けていたばかりの人です。これまでの経緯を説明したB5コピー用紙2枚の文ですが、冒頭13行の中に、「深くお詫びする」との文言が3回も出てきます。政治不信を招いた事態を申し訳なく思うという内容です。

 彼は私より17歳歳下。初当選は2003年だから私のそれ(1993年)より10年後輩になります。公明党の与党参画後に自民党代議士になった人ですから、不適切な例えですが、後妻に入った先の本家に生まれた御曹司のように私には思えたものです。自民党を倒すべき対象と見て敵視してきた私のような、野党・公明党の生え抜きからすれば、戸惑いが先立って付き合い辛い存在でもありました。

 選挙でお世話になる(小選挙区で彼を応援し、比例区で応援を貰うだけでなく、隣接小選挙区での応援も貰う)得難い〝同志〟ではあるのですが、日本という国をめぐって深い意見交換をした覚えはありません。今頃になって、私は公明党の後輩たちに国家ビジョンを持て、自民党とそのテーマで議論しろと言っているのですが、私自身、西村さんとそうした議論をしてこなかった反省があります。(この辺りについては、また稿を改めて論及したいものです)

●2つの感想と1つの提案

 さて、お詫び状に戻ります。当選後20年足らずの間に、西村さんは安倍晋三元首相の最側近になっていました。尤も、彼の岳父が山口県出身の代議士だったことも強い影響があろうと思われます。ともあれ、安倍側近の彼は、肝心の後ろ盾の不慮の死後、急転直下で苦境に立たされたわけです。ここは隠忍自重して再起を期すしかないと思われますが、普通の眼で見て、その道は前途多難、お先真っ暗という他ないでしょう。

 ここでは、二つの点に絞って感想を述べて見ます。一つは、心配をかけた、申し訳ない、反省する、という言葉はあっても、恥ずかしいという言葉がないことです。かねて私は不祥事の当事者からこの言葉が発せられないことを疑問に思ってきました。スキャンダラスなトラブルについて、罪と罰の側面から語られることは当然ですが、そのこと自体に恥と誉の角度での自省があって。欲しいと思います。自分のしでかしたこと、関わったことに「恥ずかしい」という思いの表現がないことは、日本固有の文化、魂の有り様から見ても残念なことです。

 二つ目は、彼が「約20名のスタッフとともに」と触れているくだりに改めて驚きました。国会議員には3人のスタッフには国家から給与が供与されます。西村さんの場合は残る17人の報酬を自前で用意しないとならないわけです。人件費だけでなく、彼らが動くことに伴う、いや存在そのものに要する、ありとあらゆる費用が被さってきます。ちょっとした零細企業の経営者の稼ぎが求められます。国会での表向きの仕事をするだけでなく、裏の仕事として経営者の才覚が求められるのです。

 西村さんの詫び状の文末には「地元の発展のため、これまで以上に精進し、これからも誰よりも働くことをお誓いします」とありました。この言葉を実現するには、今まで以上のお金がかかってきます。それについてはこの際、一切合切辞めて見たらどうかと私は提案したいと思います。スタッフは最低限の3人に絞って、お金をかけない方法で知恵を絞った政治活動(この国のビジョン作成など含め)に専念したら、どうなるでしょうか。

 その試みは意外に政治家とカネ、政治家の真の働きというテーマに大きなヒントを与えてくれるのでは、と私は思います。(2024-3-5)

Leave a Comment

Filed under 未分類

Comments are closed.