【160】政治資金規正法改正での〝自公分裂〟の妙味/5-18

 ようやく来週から衆議院政治改革特別委員会での政治資金規正法改正をめぐる審議が始まる見通しとなりました。これまで自民党が自らの法案を出し遅れ、公明党の案をベースにして、自公統一の与党法案を作る流れだったものが壊れてしまい、それぞれ別の動きをすることになったのです。これをどう見るべきでしょうか。与党としての結束が緩んだとして悲観的に見るか。それとも、自民党に合わせてばかりいず、独自の姿勢をさらに打ち出せるいいチャンスと見るか。これまで与党一本化が当たり前だったのが、異例の分裂です。これまで私は、公明党が「政治の安定」を優先するあまり、「政治の改革」を後回しにしてきた側面を指摘し、方向転換を強く提起してきました。その立場からは歓迎すべき事態だと思います。これはカネと政治にまつわる問題ゆえに、いい加減な妥協ができない特殊なケースなのか。それとも連立政権の有り様に大きな変化が起きる兆しなのか。経緯と現状を追いつつ、未来予測を試みてみましょう◆この法案については、自公それぞれの考え方を提示した上で、5月9日に大筋取りまとめました。収支報告書のオンライン提出を始め、インターネット上での公開、外部監査の導入、第三者機関の活用などについては明確に一致をみました。ですが、政治資金パーティ券購入者の公開基準額については「5万円超」への引き下げを主張する公明党と、「10万円超」とすべきだとする自民党との間で折り合いがつきませんでした。また、政策活動費についても、自民党は「組織活動費」「選挙関係費」など大まかな使用目的のみを収支報告書に記載するものとした案を提示しましたが、明確に使途を明らかに記載すべきだとする公明党との間で合意にいたりませんでした。14日には自公党首間で、こうした不一致点はあっても与党両党として一本化することを確認しあったのですが、現場担当者の詰めの作業で合意が叶わず、結局自民党は単独で法案を出す方向になったのです◆公明党としては、最終的に与野党の幅広い合意を得ることが大事であるとして、法案化作業と野党の意見聴取を同時並行でやる構えを見せていました。それが、与党内でまとまらず、頓挫したことは今後の調整の難しさをあらためて露呈したことになります。また、政策活動費については、公明党は、政党から所属議員個人にお金を出すことは一切行っていません。他党のように、党幹部に支出する政策活動費とは明確に違うのです。つまり、公明党の収支報告書にある政策活動費は、全て政務調査会の政策を作るための活動のためのもので、従来から明細を全て公表しているのです。一部報道機関(フジテレビ)がここを勘違いして、誤って報じたものを公明党の指摘で、改めて間違いを認め謝罪したのは周知の通りです◆来週からの実質審議の中で、現実的にはどうなっていくのでしょうか。公明党は自前の案を出せば、自民党とのスタンスの違いがハッキリし過ぎるとして、独自案は出さないようです。連立関係を損なってまで自前の案にこだわらないとの姿勢を明確にしたものでしょう。報道によると、ある自民党幹部が「自民党案に公明党が反対すれば連立が成り立たない」とした上で、「公明党に自民党の支援なしで当選する人はいるのか」と選挙支援を絡めて、牽制しているといいます。仮にもしそういう態度が自民党の大勢なら、公明党のみならず国民の反発を招くことになることは必至だと思われます。現在の時点でも自民と野党の溝は大きく隔たっています。それを間に立って調整して合意を得ようとする公明党を遠ざけて、強引に突き進めば、自公関係の破綻に行き着きかねません。公明党はここで自民党の歩み寄りを求めつつ、野党との合意に汗をかく必要があります。与党一本化ができないことで、かえって自民党と同じ穴のむじなではないことが明確になりました。与野党の間に立って、中道政党の真骨頂を発揮するチャンスだと思われます。(2024-5-18)

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