米大統領選挙の2人の候補者の90分間の討論を先日テレビで観た。メロメロに見えた民主党のバイデン大統領と違って、新たな候補・ハリス副大統領はそれなりにしっかりとメリハリが効いた攻守の展開でホッとした。世界のトップ・リーダーを決める選挙の討論会で初歩的なハラハラどきどきは御免被りたい。トランプは、いわゆる「常識」を超えた言葉遣いや振る舞いで、日本人的には理解不能な側面が強い(米国人でも熱烈な支持者を除いてその色合いが強いようだが)人物だが、今回の討論会では司会役がファクトチェックをして、事実と相違する発言にはいちいち注意していたのは良かった。個人的にはハリスに勝たせたい思いが強い。なにしろその執務室に池田大作創価学会SGI会長の写真が掲げられていたのだから。トランプが大統領になって、我が畏友・宮家邦彦の本のタイトルにあるように、「復讐が始まる」というのでは正直なところ怖い。分断の危機を煽るトランプの復活で、「第三次世界大戦」も真実味を増す。尤も歴史は民主党政権下の方が共和党よりも戦争に馴染んできたことを証明しているのだが◆さて、日本の場合である。国民が直接トップを選ぶ選挙と違って、日本の場合は直接選べない。自民党の党員、地方議員や国会議員たちにしか投票権がない選挙で、この党の総裁に選ばれた人が首相になるケースがほとんどなのである。今回現職の岸田文雄首相が不出馬となって、過去最高の9人もの候補者が乱立しての選挙戦がスタートした。これから27日の投票日まで延々と舌戦が続く。新聞、テレビが様々な取り上げ方をしているが、投票権のない、自民党員でない一般の有権者は、色々見聞きして好悪の感情を抱いたところでも、隔靴掻痒では困ったものだ。「政治とカネ」と「旧統一教会」問題で、壊滅的状況を迎えている自民党が一般国民への〝めくらまし〟を演じることがあってはならない。そこで、私としては、ダメもとを承知で2つほどの提案をしてみたい◆一つは、野党第一党の立憲民主党も代表選挙をやっているが、それぞれが身内だけで選挙戦をやるのではなく、相互乗り入れでやってみてはどうか。「9対4」ではどうにもならぬという疑問もあろうが、与野党それぞれが勝手に言い放題ではなく、疑問点を投げ合って議論を深めてみると面白いと思われる。男女の代表を双方一人づつ選び出して「2対2」でやるのも一興だろう。「野田対高市」「石破対枝野」といったカードは面白そうだ。それは出来ぬと言うなら、それぞれの相手党への批判点を投げて、それに全員がどう答えるかをチェックするような場面があってもいいと思う◆もう一つは、与党間の討論である。自公連立政権も20年を超えて続いているが、一般的にはその実情が見えていない。なぜか隠されている。単に「選挙互助会的連立」ではなく、それぞれの政権構想を戦わせる、つまり「この国をどうするのか」との根本的な「ビジョン討論」をして見せてほしいと思うのは私だけだろうか。いわゆる「党首討論」でも、公明党の党首は一切表に出てこないのは、おかしくないか。かつて、毎日新聞社が安全保障を巡って全政党間の討論を展開したものを単行本にまとめていたが、実に興味深いものだった。そういった「超党派のテーマ別対論」があっても悪くないように思われる。以上、〝出来そうにないものねだり〟のようだが。「政治とカネ」「旧統一教会」問題という自民党の宿痾とでも言うべき巨悪を覆い隠すための「お祭り的総裁選挙」であっては断じてならない。このことを改めて強く主張しておく。(敬称略 2024-9-15)