【185】吉と出るかはたまた凶と出るか━━全ては選挙での国民の判断に委ねられた/10-10

 石破茂氏が自民党総裁に選ばれてから、2週間足らず。国会召集から首相指名、所信表明演説。それへの各党代表質問を経て、85分の党首討論。そして衆議院解散。あっという間の出来事だった。この間の猛スピードぶりや、首相発言の中身に対して、野党は勿論、メディアの評判もいたって悪い。それらに共通するのは、総裁選挙を通じての発言とあまりに違いすぎる、まるで手のひらを返したようだということだろう。私も大いに落胆した。所信表明への代表質問に対する答弁が専ら棒読みで、ご本人の口癖だった「自分の言葉」が殆ど出てこなかったからだ。ひどい出来栄えに見えた。ずっとテレビの前に座っていたわけではないので、不確かなのだが、イメージ先行の捉え方をすれば、その印象が否めなかったのである。ひな壇の先頭席での首相は、照れ隠しのような彼独特の含み笑い的表情で、臨席の林芳正官房長官の端正な顔つきとの違いが際立った。衆参2日間の〝セレモニー出演〟は、お世辞にも褒められたものではなかったというのが率直なところだ◆ところが、昨日の党首討論はうって代わって「良い面」が見られた。勿論、ここで「良い面」というのは少々意味合いが違うかもしれない。過去の自民党の首相は、野党の追及に対してすり替え答弁をしたり、はぐらかしたりして、まともに答えない場面が常態であった。ところが昨日の首相は認めるところはそれなりに認めていた。前日2日間の棒読みとは違って堂々と自分の言葉で述べていたように見えた。たとえば、政策活動費について、石破幹事長時代の2年(2012-14)に、どういう使い方をしたかと問われて「国会でいろんなご議論を賜るときに、それを円滑にするため」に使ったと述べたり、「いろんな選挙区でいろんな事情もあり、厳しいところも当然ある。そういうところで、適法な範囲内で今許されている政策活動費を使うことは、可能性として否定しない」と述べたりした。彼らしい正直な答弁だったといえよう。一連のやりとりを見聞きしていて、立場の違いが錯綜する中で、隠さず述べるところは好感が持てた。尤も、ここはせめて「近い将来には、政策活動費はきっぱり廃止する」と明言すべきだったろう。自民党の総裁候補者間に廃止論が出ていたし、公明党も廃止を明確にうち出すよう求めているのだから、物足りないというしかない◆また、政治資金収支報告書に不記載があった12人の議員らを、石破自民党は公認しないと公表した。野田佳彦氏はこれでは少な過ぎると追及した。首相は「そういわれるが、よくよく判断をしたうえでのことで、最終的な判断は主権者たる国民に任せる」といい、非公認の候補者が当選した場合、「(追加公認については)主権者たる国民が判断された場合、公認することはある」と、ここでも正直に発言していた。つまり、問題だらけの考え方を堂々と誠意を込めて正直に語っていたというのが率直な印象だ。これをどう国民が判断するか。吉と出るか、凶と出るか━━選挙での有権者の判断にすべて委ねられたのである◆この問題に関連して衆議院小選挙区で、自民党が公認した予定候補のうち、174氏の推薦(第一次)を決定した上で、無所属の小選挙区予定候補2氏の(兵庫9区の西村康稔氏と埼玉13区の三ツ林裕巳氏)推薦も決めた。これには驚きを持って聞いた人も多いと思われる。兵庫9区の明石に住む私のところにも、何故かとの問い合わせが幾つもあった。この2人の選挙区と隣接する選挙区を重ね合わせると自ずと分かってくるというものだろう。党中央の発表(西田実仁幹事長の昨9日の記者発表)によると、今回の判断を下した基準は①地元の公明党員、支持者に謝罪し、説明責任を果たしたか②公明党との協調に貢献したか③地元の党員、支持者の納得を得られたか━━であるという。推薦決定にあたっては、地元の意思を最大限に尊重したとされる。私は、西村氏については彼の初陣の時からよく知っているが、識見、人柄共に卓越していると評価してきただけに、今回の不始末には驚きもし、残念にも思ってきた。既にブログにも「『ゼロから出直す』というなら、秘書を公設秘書3人プラス私設秘書1〜2人に絞って、大所帯の秘書団は廃すべし」と、差し出がましいことも書いた。また、推薦に際しては、「自公連立政権合意」の徹底を候補者に求めるべしと言わずもがなのことも言った。本人のためにはいらぬ情けは不必要に思われるが、それは門外漢の無責任な妄言なのだろう。(2024-10-10)

 

 

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