【184】「空文化」は許されない━━2024「自公連立政権合意」を前に/10-4

 私の目の前に2つの「自公連立政権合意」を報じた記事がある。一つは、3年前の11月2日の岸田・山口両党首によるもの。もう一つは、このたびの石破・石井ご両人が交わしたものである。前者が世に出た頃はコロナ禍真っ盛りとあって、当日の写真は2人ともマスク姿。冒頭に「我々は一層気を引き締めて、国民の声を聞き、謙虚な姿勢で真摯な政権運営に努めていかなければならない」とある。山口氏は党首会談後に記者団に対して、合意文中冒頭にある「一層気を引き締めて」という言葉が「連立政権の心構えだ」と強調していた。しかし、それからほどなく、「政治とカネ」にまつわるいわゆる「裏金事件」が表沙汰になった。安倍派を中心にした、派閥ぐるみでの脱税紛いの不祥事がかねて自民党の底流で渦巻いていたのである。それに「統一教会問題」も加わって、自民党の屋台骨を揺るがし、存立基盤が問われる嵐となった。連立政権のパートナーである公明党も大きな余震、余波を蒙ったことは言うまでもない◆新しい党首同士による今回の政権合意書には当然ながら、その「危機意識」が滲み出ている。前回は猛威を振るった「コロナ禍」への対策が先頭で、「政治改革」は、ほぼ末尾に2行だけしか触れられていなかった。それが今回は冒頭に「政治改革」が掲げられている。まず、「政治の信頼回復を図るため、政策活動費の透明性の確保や、『政治資金に関する独立性が確保された機関』の設置、政党交付金の交付停止などの制度創設など不断の政治改革に取り組む」とある。加えて「調査研究広報滞在費の使途の明確化、使途の公開、未使用分の国庫返納などに取り組むとともに、当選無効となった議員の歳費返納などを義務付ける法改正の実現を図る」と続く。これをどう見るか。まだまだ手ぬるい、これでは再発必至との懸念もあろう。いや、第三者機関設置による監視機能が整えば、大きく前進するはず、その実現に期待するとの見方もある。ともあれ政治改革に「不断に取り組む」との一言を信じたい◆欲を言えば、「国民各層の厳しい目線を意識して」とか「大衆本位の政治に更に一段と立って」とか、短くてもいいから、「あゝ反省の気構えが伺えるな」と思える感情のこもったくだりが欲しかった。でないと、結局自民党は、「政治とカネ」の問題に深い反省はしていないと見られ、公明党はそれを見逃すのかと責められるに違いない。総選挙が近づくにつれ、裏金議員の公認をめぐって不審や懸念が取り沙汰されており、石破首相の対応が注目されている。公明党的には自民党候補が推薦に値するかどうかの見極めが必要となる。その際に、各候補者がこの「政権合意」をどう認識しているか、実現への熱意が問われてこよう。今までの「政権合意」の位置付けは、両党が目指す最大公約数的な枠組みに過ぎなかった面は正直否定できないかもしれない。しかし、今度は違う。自公政権の本気度が試される。石破、石井両党首誕生からわずか数日の余裕しかないままの「政権合意」作成だった。急拵えのイメージを払拭するためにも石破、石井両党首肝入りの「政権推進課題検討チーム」を作って議論を重ねていってはどうか◆例えば、今回の総裁選挙で石破氏がいくつかの「新基軸」を打ち出した。公明党として直ちに賛同できるものも、できかねるものもある。これらをめぐって、早期に首相の考え方を丁寧に聞いておく必要があろう。うち続く災害への対応としての、防災省設置の提案や、地方創生への首相構想なども両党ですり合わせたい。さらに、憲法に自衛隊の存在を明記することをめぐっては、石破首相の本意は自民党の主流の考え方と異なる部分があるように思われる。また原発についても、政権合意にある「安全性が確認され地元の理解が得られた原子力発電所の再稼働」との記述には違和感がある。原発にどこまで依存するのかの〝線引きの合意〟がなくて、とりあえずは再起動を目指そうとしているかに読める。そんな曖昧な合意でいいのか。この辺りも含め、連立政権の中長期的展望やビジョンについても積極的な議論を開始する必要があろう。(2024-10-4)

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