【191】問われる県議会、既存メディアへの信頼━━兵庫県知事選の結果/11-18

 「いったい全体どうなっているの?兵庫県は」━━当初、毎日の新聞やテレビを観てきた人は、概ね齋藤元彦前知事が再選されるとは、思っていなかったはず。それがあれよあれよと言う間に、ぐんぐん形勢は変化していきました。ネット、ユーチューブなどSNSで、興味津々な舞台裏を日々観てきた人びとにとっては、まるで出遅れたランナーが見事に逆転する姿を見るようだったのです。実は私には、今回の知事選に至る状況の一部始終を追い、街頭演説の現場にも足繁く通った、〝妙に暇で粋な友人〟がいます。彼による連日の報告をあたかも実況中継のように聞いてきました。齋藤候補の街頭の演説には、話を聞き終えて握手やサインを求める人たちが列をなしており、涙ぐむだけでなく泣きだすひとたちもいたことを日々聞かされてきたのです。この人たちは恐らくSNSで知った「裏話し」を確認するために、現物を見に足を運んだものと思われました◆この逆転劇の背景には〝一つの伏線〟と「一つのシナリオを描いた人物」の存在があるように思われます。一つ目の伏線とは、知事不信任案が全県議会議員の賛成によって成立したことです。百条委員会の場で、まさに被告を査問するかのような辛辣なやりとりが見せつけられました。厳しい追及に対して、殆ど感情を露わに見せず淡々と答える知事の姿が極めて印象に残りました。前知事の頑ななまでの一途な姿勢をどう見るか。自分を文書で批判した県幹部の自死については、最小必要限のお詫びに留め、ひたすら県政の改革に努めたいとの意思を貫き通しました。当初は異常に思えた風景が選挙戦が進む中で、〝作られた知事批判〟へと変化していったのです。もう一つのシナリオを描いた人物とは、「NHK党」の立花隆志氏のことです。彼はユーチューブを駆使して、〝はめられた齋藤元彦〟を描き出す役割に徹しました。選挙戦に出馬して、自分が当選したいということではなく、前知事を応援するために、今回の選挙に至る背景を露わにしていったのです。キワモノと見られがちな人物の、もう一つの事実を描く手法に、県民の多くは驚き、翻弄されながらも、高揚感を持っていったといえそうです◆私が観たユーチューブでの極め付けは、『齋藤を貶めた主犯格』でした。一部県議たちの動きを実名で批難するもので、ことの真偽はともあれ、中々迫力あるものでした。こういう映像からは、新聞、テレビの既存メディアが報じるものと全く違ったストーリーが浮かび上がってきます。作った側の意図、検証の有無など考察を必要とするテーマが幾つもありますが、〝一見は百聞に如かず〟の威力は抜群なのです。しかもそれを解説する人物が複数出て、選挙戦最中に語るとなると効果は的面でしょう。加えて、前知事と対立した候補の背景をなす勢力がその「物語」に関わっているとなると、ことはおだやかではありません◆この事態の背景には、既成メディアと政治家への不信が相乗作用と効果を発揮しているように思われます。速報性で劣るだけではなく、「一点集中」というよりも〝多数混濁〟に傾きがちで、しかも〝各種しがらみ〟への忖度に縛られがちな既成メディアは、SMSに太刀打ちできないと言えそうです。また、今回の事案での県議会各政党の動きは、日頃の主義主張とはまるで裏腹に、多様性を微塵も感じさせないほどの〝一致団結ぶり〟は見事なまでの〝非民主主義的〟なものと言わざるを得ませんでした。寄ってたかって前知事を叩く風景は、あたかも学校現場でのいじめを見るようで、聴衆の「判官贔屓性」を呼び覚ますに充分だったのです。「真面目に県政改革を叫ぶ齋藤さんが可哀相」と。ここには選挙時とは違って、日常的には有権者を顧みようとしない〝特権階級の議員体質〟とでもいうべきものへの反発も含まれているように思われます。勿論ここで述べてきたような〝現実とは違う事実〟も幾らでも指摘できます。選挙戦終盤のこだまする「齋藤コール」の響きは、対立候補の無念の呻きと共に、これからかなり尾を引きそうです。(2024-11-18)

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