【190】架空鼎談「僕らの夢の行方」━━「原点回帰」の意味するもの/11-11

「自公惨敗」に衆院総選挙が終わって2週間。今日からは、特別国会が始まる。安倍晋三政権が復活して以来10年余り続いた政権の安定が脆くも崩れた。「政権交代」が寸止めに留まったものの、極めて不安定な国会状況になった。常々「与野党伯仲」が望ましいと広言してきた私ゆえ、文句を言う資格はない。この事態をどう見るか。3月のこの場での爺さんと息子と孫娘の架空鼎談を再現して、考える糸口を見つけたい。

●「与野党伯仲」での緊張の効果

孫)今度の選挙の結果、お爺さんがいつも言ってた「伯仲状況」が実現したけど、国会は何もかも大騒ぎ。緊張感が漲ってはぃるけど、こんなことでいいの?

爺)公明党が小選挙区で全員勝って、比例区も改選前ぐらいに留まっていて、自公両党でギリギり過半数だったらいいと思ってたんだけど、やっぱり、そうはいかなかったね。改めて「民意」って凄いなって思うよ。

父)どう考えても、「旧統一教会」や「政治とカネ」の問題で、自民がデタラメなことをやってきてたってことが明白になったのに、その対応ぶりがいまいち釈然としなかったからね。〝天罰てきめん〟って、とこだよ。

爺)公明の立ち位置も難しかったなあ。こちらを立てればあちらが収まらず。野党の意見を自民に飲ませるかなという場面もあったけど、結局は尻つぼみ。公明って、「自民のお助けマン」との印象だけ残ってしまった。

孫)しょうがないよ、一緒に政権組んでるんだから。私が物心ついた頃からずっと与党だよ。「あちらと思えばまたこちら」っていう風に与野党間を調整に飛び回るなんて、現実的には無理よ。「自公同罪」なんだし。

★「古い体制壊し」のせめぎ合い

父)さてこれからどうするかだけど、代表が新しくなったばかりで落選してしまった。それだけでなく、小選挙区で落ちた人たちはいずれも党のこれからを担うエース級。前途は厳しいよ。どうするつもりかなぁ。

爺)そういうことも勿論あるけど、もっと根本的なことは、公明党の夢って何かであり、みんなそれを見失ってることに深刻な問題があるって思うよ。わしらの若い頃は、「55年体制打破」つまり、「自民党一党支配」を崩すことに情熱を燃やしたもんだよ。公明党の草創期は夢や物語と共にあったというのが正直なところだね。

孫)ああ、それって、忠臣蔵の赤穂浪士を公明に見立て、自民のトップを吉良上野介に据えてみたり。また、中国の三国志を日本の戦後政治に当てはめて、魏蜀呉を自公社に見立てて、勝手に夢膨らませたって話ね。

父)何度もオヤジから聞かせられたよなあ。でも、仇討ちって発想は古いし、公明が与党化した時点でジ・エンドとなった物語じゃあないの。でも、それに代わりうるなんかが欲しいよね。

爺)遂に気がついてくれたか(笑)。立憲民主の連中は、自公政権がほぼ確立した「99年体制」を打破することに執念燃やしてるって聞いたぞ。彼らも物語に生きてるはず。人間って夢に情念を掻き立てられるもんだよ。

●「失われた30年」との戦い

孫)公明は「原点回帰」って言ってるけど、それじゃあダメなの?創立者の掲げた大衆に政治を取り戻すってことに帰着するものなんでしょ?野党とか、与党とかじゃあなくて。ただ、それにプラス何か今の私たちにグッとくるお話が有ればいいわねぇ。

父)党が創立されて今年で60年だけど、前半の30年と後半の30年はまるで党が違ったように見える。前半は敵だった自民が後半は守るべき存在になってるし。後半の戦いの厳しさと複雑さに公明が手を焼いてるっていう風に見えるかもしれないね。

爺)公明が連立に加わって、自民政治を政権の内側から改革するというように方針を変え、再出発してから25年ほどが経った。実はその少し前の1995年辺りから、「失われた10年」という形容のされ方で、デフレ不況が問題視され、それが20年、30年と10年づつ積み増されてきた。この問題の絡み方がコトをややこしくしている。

父)それって、単に経済の問題だけでなく、社会全体の構造の変容に深く関わっているんだよね。そういう時代社会の没落傾向に向かって公明が立ち上がったんだけど、いつの間にか押し流されているって感じかなあ。

娘)今回の選挙でも、「れいわ新選組」なんかが「失われた30年」を取り戻せってしきりに叫んでいたけど、若者中心に共感を呼ぶところがあるわね。公明が「原点回帰」という場合、そういう時代の変化にマッチした取上げ方を加えていくと、より一層現実味を増すように思えるわ。

爺)うん、いいこと言うなあ(笑)。公明の60年の歴史のうち、前半30年はおおよそ高度経済成長期だった。一方、後半30年はほぼ低度経済混迷期だったといえるよね。その日本社会全体の苦闘の時期は、自民だけでは抗し得ない状況下でもあったんだけど、公明が必死に頑張ってきた。そこんとこの捉え方だろうね。

父)「原点回帰」と聞くと、イデオロギーでなく、大衆という生身の人間を大事にする政治に戻ることだと思うけど、今はかつてのようにイデオロギーはのさばっていない。でも大衆は相変わらず大事にされていない。

孫)うん。だから戦いを続けなくちゃいけないっていうことなんだろうね。でもそれには大衆の多様化による日本社会の変質、国際社会における内向き思考、分断の激化などという、内外環境の変化を考えないとね。ともあれ、「原点回帰」と一言で済ませられない多くの問題があるってことよね。(2024-11-11)

 

 

 

 

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