前回は、自公政権下にあって、公明党の「立党精神」としての「大衆のために」の真意が自民党との間で共有されないと、所詮は選挙で有権者の理解を得ることは難しいというところで終わりました。以下続けます。
●「大衆観」の変容にどう対応するか
娘)なるほどね〜。でも私なんか「大衆」と聞いてもピンとこないな。むしろ「若者と共に」って、言ってほしいな。「イデオロギー」って、持ち出すの、もう古くない?
父)おっと、そう来るか。「昭和も遠くなりにけり」って、言いたいんだな(笑)。「大衆と共に」って、「エリート」や「富裕層」を意識した政治じゃあなくて、普通の市民に視点をおく政策が大事だってことだよ。
娘)勿論、それって分かるけど、少し、ワンパターン過ぎるって気がするなあ。AI時代にふさわしい、新しさ、ダイナミックさがないと、浮動票層がついてこないって思う。何か工夫が必要じゃあないかなあ。
爺)「立党精神」は不変だけど、理解を広げ、深めるために、訴える際に補助線めいたものはあってもいいかもしれないね。かつての「大衆」には、イメージとして貧しさや病弱さがつきまとってたって思うけど、今では、子供たちの世界のいじめ、引きこもり、不登校からヤングケアラーまで多様な問題が生じてきてるから。
父)「大衆」に包み込まれる層が多様化して見えるってことかもね。それにしても、親父さんも柔軟になったなあ。「老いては孫に従え」って、寸法なんだな。俺たちとしては、「老いては親父に見倣え」ってわけだ。
娘)お父さん!また茶化さないで!(笑)。去年の都知事選での〝石丸旋風〟や、兵庫県知事選の〝斎藤現象〟なんかを追って見てると、只事じゃないって気がする。みんなSNS時代についていかないと、取り残されるよ。
父)うーん。確かにね。玉石混交の情報の中から、真っ当なものを見極めるって結構大変だ。特に政治の世界は、既成の支配層をひっくり返す発想で、虎視眈々と「現状変更」から「破壊」を狙ってる連中がいるから。
爺)ん、だからこそ、我々公明党支持者の出番だよ。さっきいった「補強」の観点からすると、「中道主義」をど真ん中に据えるって、重要なポイントだと思うな。政治家ばかりに任せずに、有権者みんなが立つ時だよ。
娘)それも定番じゃないの?だいたい、「中道」って、2つ合わせて半分に割る「中間」のイメージが強いし、メディアや世間の風潮は、保守とリベラルのどっちでもない中間を「中道」の名の下に一緒にまとめたがる。
父)ところで、それでもいいとする捉え方が我々の中にもあるかもしれないね。いわゆる「中道」は中間派的で、公明党本来のスタンスは「仏法中道主義」に基づくものなんだけど、いちいち説明するのも面倒だから。
爺)そのあたりは重要だけど、それにこだわりすぎると、一般的には〝思想過剰〟と見られるから、もっとサラッと行くべきかもしれん。ここは思案のしどころだ。なんて言い続けて21世紀も早くも四分の一が経った(笑)。
●「中道主義」の存在感をもっと
娘)私からすると、先輩世代は「大衆」「中道」のスタンスにこだわってるくせに。世の中に対するアピールが足りないよ。もっとバンバン言いまくり、書きまくる人が出て、存在感を見せてくれないと、ね。
父)その点でいうと、太田昭宏元代表が「中道」について、「解を求め続ける知恵のダイナミズム」だって、あの人らしい定義の仕方を理論誌『公明』でしてたなあ。雰囲気的には良くわかるし、何たってカッコいい。
爺)カッコ良過ぎてもう一つ意味がわからん(笑)。でも、「現場には空気があり、匂いがあり、順位が分かる」とか、「『権力の魔性』とポピュリズムに抗する」なんて、実にうまい言い方をするなあ(笑)。
父)そうした「太田節」を受けて、思想家の先崎彰容さんが「土の匂い」という表現に共鳴した上で、「公的なものへの参加」を強調し、「繊細さを忘れぬ」ことが「中道政治」だって、難しい言い方をしてたねぇ。
娘)あんまり私たちの世代にはピタッとこないけど。でも、そんな言い回しが飛び交ってること自体には興味が湧いてくるわ。公明党について、もっとみんなが話題にして欲しい。旧態依然とした宗教的な観点からの批判だけではなくって。SNSの世界では、次元の低い一方的な攻撃が多くてうんざりしてしまう。
父)僕の友人が、沖縄の辺野古への基地移転問題で最終的にカギを握る公明党の国交大臣が、反対者の要請に笑顔で応対する場面がテレビのニュースに出てくると、どうも違和感を感じるって言うんだ。もっと苦渋に満ちた顔をして欲しいと。また、核問題で創価学会と公明党の態度が相反するように見えるのはおかしいとかね。
爺)表情への注文か。細かいな(笑)。でも分かる気はするよ。自民党の政策で「政治とカネ」と並んで公明党との違いを感じるのは、外交、防衛分野だし、核問題など「平和」について、だろうね。「福祉」などは一致する部分は多いから。公明党も自民と歩調を合わせ過ぎずに、独自色を発揮することがもっとあっていいよな。
娘)私なんか生まれた時から公明党は与党で、自民党といつも一緒。だけど、よってたつ基盤を異にする別の政党なんだから、日頃からあれこれ議論して、合意形成へ努力してるのかというと、あんまりしてないみたい。
父)公明党の国会議員も自民党の議員と政策だけでなく、党の綱領や理念についても意見交換をするのが相互理解のためには重要だと思うけど、難しいかな。ないものねだりするみたいだけど、そう思うね、近頃とくに。
爺)結局答えらしきものは出てこなかったけど、考え続けることが大事だということをお互い確認し合って、今年の出発にしよう。ワシも今年80歳になる。〝見えない壁〟突破に向かって、頑張るぞ!(2025-1-10)