3月号の『公明』に苅部直さん(東大教授)が、昨年の衆院選に関連して率直な公明党への注文をつけています。ここではその指摘をどう受け止めて、どうこれから対応すべきかを考えてみたいと思います。苅部さんの指摘をあげた上で、私の考えを提示していきます━━あたかも対談のように見えてきませんか(笑)。
⚫︎対自民の歯止め乏しく、独自方針の努力弱し
苅部)一つは、連立を組む自民党に対して歯止めをかけ、独自の方針を打ち出す努力が、最近は乏しくなっているのではないか。(中略) 結党当初から中道政治を掲げている公明党の凋落を、なぜ止められなかったのだろうか。昨年の衆院選において、中道を掲げる公明党は本来ならもっと伸びてもよかった。それが難しいとしてもせめて、現状維持にとどめられたはず。もう一つは、「政治とカネ」の問題に対してこそ、公明党は清廉さをアピールできたはずなのに、それができなかった。以上の2点は、政党としてきちんと検証し、関係者でよく議論すべきだ。(8頁下段〜9頁上段)
赤松) ご指摘の通りだと思います。与党になって、当初はギクシャクしていましたが、連立を組んできたこの20数年というもの、段々関係が深まり、良くも悪くも自公は一体化してきました。いい面は、統治する力つまり責任政党としての実力が付き、提案した政策の実現も官僚機構との阿吽の呼吸でスムースになりました。一方、悪い面は、公明党らしさが影を潜めてしまったですね。つまり、総点検など現場に走って、実態を調査する姿勢が以前より減ってしまいました。庶民大衆よりも役人、自民党に寄り添う傾向が強まったと残念ながら見ざるを得なかったのです。「政治とカネ」問題では、昔なら〝ちゃぶ台返し〟をする場面でしたが、妙に物分かりが良くなり、自民党を庇う姿が印象に残るばかりでした。自民に身内意識が強くなってしまっては、庶民の反感を買いますよ。
⚫︎一般市民との接点を日常的に作れ
苅部)個人的な見聞を言うと、同じ地域に住み続けて20年以上たっているが、その選挙区から当選した国会議員その人については、選挙期間も含めて、顔を見たことすらほとんどない。小選挙区選出の議員でさえそうなのだから、比例選出の場合など、接する機会はまずない。こういう状態を変えるべきだ。(9頁下段前半)
赤松)うーん。公明党の国会議員は党員、支持者の前に顔を出すのが精一杯で、世間一般の皆さんの前に姿を現すという場面は、街頭演説ぐらいで、殆どないかもしれませんね。私も反省込めて振り返れば、普通の有権者と語り合うというのは、20年間の現役時代を通じて数えるほどだったと告白せざるを得ません。自分の友人とはあれこれやり合っても、不特定多数の外部有権者との接触は難しかったと言うのが現実です。議員がどんどん地域の人々の意見を聞き、言葉を交わすべきですね。
苅部)公明党も自民党も議員が支部組織・支援団体を回って、そこで挨拶するだけで多忙になってしまう状況は、もちろん理解できる。しかし、それだけでは、どんなに優れた実績や能力、人柄があっても、一般市民に認知されない。市民との接点を日常的に作ることに、政治家が努力していない。それが、公明党始め既成政党に対する支持を減らす原因になっていると思う。(9頁下段後半)
赤松)私の場合、最初の選挙で落選しました。それから足掛け5年というもの、駅前で朝立ち演説をやったり、夕方、スーパーや市場の前で演説をよくしたものです。ところが当選すると、いっきにその回数が減り、地元に帰った週末だけとなり、やがては選挙の時だけとなってしまったと言わざるを得ません。ただ、公明党の地方議員は、街頭演説を競い合ってやってきています。私の後輩の県議は凄まじいまでの活動で身体を壊してしまったケースもあるほどです。
苅部)党員、支持者だけの内輪の集まりではなく、地域の市民に向けた国政報告会を定期的に開催するとか。そういった活動に、もっと熱心に取り組んだ方がいい。(10頁前半)
赤松)確かにそれは大事です。かつて1990年代初めまでは、選挙に際して立ち合い演説会がありました。各政党の候補者が全部集まり、地域ごとにそれぞれ演説を競ってしたものです。激しいヤジが飛び交う場面続出でした。結局それもなくなりました。政治家が楽をする方向に選挙の仕組みを変えていってしまったのです。
⚫︎党内議論を見えるように徹底的に行え
苅部)厚生労働省など、政府による説明は、しばしば詳し過ぎて分かりにくい。(中略) 公明党にとって社会保障の問題は、もともと得意な分野のはず。それ以外の領域も含めて、政府の施策を、官僚に代わって丁寧に説明し、市民が納得できるよう努力をしていけば、公明党の前途もそれほど暗くない。(10頁下段中盤)
赤松)それもまた大事ですね。公明党は国交大臣を連続7人輩出していますが、厚生労働副大臣や農水副大臣、財務副大臣や政務官などは10人を超えているはずです。私のように引退したものも多いですが、現役のメンバーが力を合わせると展望が開けるかもしれません。ただし、政府の施策を説明するというだけでは、結局は与党化、自民党化に直結する可能性大ですから。批判も折り込みメリハリつけないと、妙なことになってしまいます。
苅部)融通無碍に色々な声に対応するというのではなく、公明党としての統一された立場を打ち出さないといけない。ただ、重要なのはそうした結論に至るまでの過程の方だろう。(中略) 党内での議論を、党員・支持者に見える形で徹底的に行えば、多くの参加者が納得できる形に落ち着くのではないだろうか。(11頁前半)
赤松)党内議論の見える化という課題はとても大事ですね。古い話ですが、私の現役時代にPKO(国連平和維持活動)を巡って、党内の侃侃諤諤の大議論があったのですが、それを逐一公明新聞紙上に掲載していったのです。全議員の賛成、反対それぞれの言い分を党員、支持者に明確にわかるように公開していったのは画期的でした。今なら、経済格差や原発、環境問題を始めとする課題などでの党内議論をもっとオープンにすべきですね。(2025-2-16)