【24】公明党の来し方行く末への懸念━━2025参院選の結果から(上)7-21

 暑い夏の熱い熱い闘いだった。20日の投票を終えて公明党は目標の14議席に遠く及ばず、選挙区4、比例区4の8議席に終わった。比例区票は512万票強。現時点では正確な選挙の総括をするだけの材料が十分ではないが、これまでの僕の見立てを中心に内外の様々な意見を踏まえ、率直な思いを述べてみたい。

 ⚫︎自公連立政治の欠落部分を突いた国民、参政党の急伸

   21世紀の幕開けと共に本格化した自公政権。結党から61年が経つ公明党にとって20世紀後半は野党であり、21世紀前半は与党として闘ってきた。もはや野党時代の公明党を知る人間が少なくなってきたが、僕のような旧世代(1945年生まれ)は、どうしても過去との比較、「本来あるべき論」に惹かれてしまう。今回の選挙を前にして、僕が主張してきたことは、2022年に出版した拙著『77年の興亡』と、翌年の続編と基本的に変わらない。それを一言で要約すると、自公政権は、どういう国を作りたいのかという国家ビジョンを明確にすべきであるということに尽きる。それを曖昧にして当面する政治課題の処理にだけ取り組んで、選挙のたびにお互いをサポートするのでは、幅広い国民各層の支持を受けられないというものだった。

 今回、国民民主党と参政党の二つの政党が大きく議席増を果たした(前者17、後者14議席)のだが、僕にはこの結果に極めて象徴的な意味合いを感じてしまう。それは自公両党が本来のそれぞれの党の「らしさ」を失ってきていることの裏返しに思われることだ。国民民主党は旧同盟系労働組合の影響下にある党として働くもののスタンスに依拠してきた。公明党が自民党と連立を組んできてほぼ25年。どうしても政治姿勢が自民党寄りにならざるを得ず、その分、政策の立地点から公明党らしさが失われてきた。その辺り、国民民主党のフットワークにお株を奪われたと言わざるを得ないのは僕だけだろうか。

 一方、参政党の急伸の背景には、自民党の保守色が公明党のリベラル性によって薄められてきたことがあると思われる。「日本人ファースト」のキャッチコピーに込められた「外国人排除」の政策タッチには、欧米における移民排除的空気を微妙に反映していよう。世界的な傾向である「自国第一主義」を持ち込み、日本「分断」の空気醸成に大きな役割を果たした。そこには、自民党の保守色が公明党との連立で色褪せてきたことと無縁ではあるまい。20世紀後半の保守と中道の老舗党2つが共に連携をする中で「らしさ」を失っていったケースと見られる。

⚫︎公明党の来し方に痛烈な疑問投げかける論考

僕はかねて中長期の視点から、この国の方向性を自公間で議論することの重要性を説いてきたが、残念ながら受け入れられてこなかった。確かに与党となることで、野党時代には見られなかった支持層を広げることができた。ライトウイング(右翼)に公明党は羽を大きく広げることが出来た。だが、それと同時に、本来持っているはずの大衆性を損なう面があったと言わざるを得ない。選挙戦の本格化と同時に世に出た党理論誌『公明』8月号の論考(写真左)がその辺りの課題を見事なまでに突いている。

 先崎彰容『苦難の道を進む米国、打ち出のこづちを追う日本』というタイトルのものだ。実は看板は中身と違って、「『大衆とともに』と大衆との乖離」と、「公明は心の荒廃を戒めよ」という2つの「中見出し」がずしりと刺さってくる。この人は、かねて「公明党よ、行く道を間違えるな」と厳しくも涼しい忠告を投げかけてきてくれている思想家(社会構想大学院大学研究科長・教授)である。

   この論考では、公明党がかつての党と違った道をすすんでいることをリアルに「公明党はだったのではないか」という言い回しを使って明らかにしている。全部で4カ所でてくるが、それを箇条書きにしてみる。①陰の部分に敏感に反応し、「大衆とともに」あることを自負してきたのが、公明党だったのではないか②公明党の政治観とは、本来、民主党系の米国左派とは大いに異なる方法で、社会の陰に寄り添い、言葉にし、政治の世界に届けることだったはず③偽善的とは全く異なる政治手法と言葉を駆使することができる政党、それが公明党だったはず④公明党は政治の世界において、人々の心が荒んでいくことを戒める政党、寛大と余裕を持った政党であるべきだ。公明党の「平和主義」も、ともすれば自尊心をくすぐる類いの、根拠なきナショナリズムを諌めることにあったはず。いずれも耳が痛い。

 「戦後80年」を振り返り、これからを考える4つの論考の中に、これが登場する。政党が自らの軌跡を機関誌に自省的に取り上げることは珍しい。僕は公明党の理論誌が敢えて厳しい論評を掲載するところに、政党の言論人の良心を感じる。(つづく 2025-7-21)

 

 

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