観光人材の発掘、育成は高校生からー徳島県での私の講演要旨(下)

観光とは、自分たちの住む地域を改めて見直し、誇りに思うものを抽出して、それを内外の知らない人に知ってもらうことが基本だと思います。「おもてなし」ばかり先行していますが、まずはその前に、他の地域、他の国の人々に、自分たちの何を伝えるかをしっかりと把握することが大事だと思うに至りました。瀬戸内海を巡っては、いにしえの人々が、そこの何に感動したかを追体験し、それをどう表現するかだ、と。そんな折に、私は、3人の強烈な個性を持つ教育関係者に出会いました。3年ほど前のことです。ひとりは、榎田竜路さん。音楽家にして映像製作者。北京電影学院の客員教授でもあります。彼は各地の高校生に地元の様々な著名人へのインタビュー形式での取材を通じて、地域に生きるその人物の実像を3分ほどの映画にするべくその制作、指導に当たっています。その作業から高校生ひとり一人が自分の住む地域に誇りを抱くようになり、ひいては自分とは何者か、何をこれからすればいいかに気づくということを強調しています■二人目は、鈴鹿剛さん。ご当地の徳島商業の先生です。彼とは淡路市で出会いました。徳島商業の男女生徒数人を連れてきておられました。いかにして淡路島を観光地として宣揚するか、そのために何をお土産ものとして売りに出すかを真剣に皆で討議する場に出くわしました。その時に女子高生から貰った名刺には驚きました。「校内模擬会社コムコム社長」とあったのです。高校生世代が自分たちの故郷、阿波・徳島地域の前に横たわる淡路島を動かすことで、徳島にも観光客を呼び込みたいとする積極姿勢には感動しました。我が兵庫・淡路島の高校生がそれに呼応して立ち上がって欲しいものと心底から思ったものです■3人目は、ここにおられる勝瀬典雄先生です。県立広島大学の客員教授をされています。この人は地域おこしの達人とも言える人で、私が以前に関わった企業で顧問をされており、富士吉田市で初めてお会いしました。そこには織物産業の低迷を打開するために、関東各地から高校生、大学生から始まって、デザイナーや企業人たちが集結していました。その後彼らの何人かと一緒にフランス・パリに飛んだり、また八幡平や塩谷、島根、広島と全国各地の地域おこしに携わっておられます。彼が徳島商業と神戸山手大学を教育連携で結びつけ、我々「瀬戸内海島めぐり協会」を観光人材を育てる実践の受け皿にすることに着眼して、焚きつけられました。私はこの人のマジックにかかって今ここに立っているというわけです■高校生世代の若者が地域を売り出すために、その地に住む人々を知り、その地域の遺産に目を配る、そこから全てが始まることをこうした人たちとの出会いから私は知りました。観光に従事することは、自分探しに繋がる。その人材を育み、育てることの重要さを発見しました。茫漠たる知識を何となくわかったように思ってるというだけでは、テレビで今話題のチコちゃんから「ぼーっとしてるんじゃあないよ」言われるのが関の山です。イギリスのリンダ・グラットンという女性の学者が『LIFE SHIFT  100年時代の人生戦略   』という著作の中で、面白いことを言っています。これからの時代は、生まれたのちに、教育を受けて、仕事をして、定年退職後の老後を趣味で過ごす3ステージという固定的な生き方ではいけない、と。5-6年ぐらいでひとつの仕事をする期間が続いたら、一旦大学や別の教育機関に入って数年間、新たな知見をそこで培って、また別の仕事をすることだと言っています。あたかも探検家のように、様々な仕事を次々と取り組む一方で、色々と教育を受けて自己を磨くというのです。そんな生き方から、大きい組織に一生しがみついて生きていくのではなく、自分自身で事業を起こす起業家となったり、いくつかの仕事を同時にこなす顧問業のようなものに従事するようになるというのです■人生100年時代の生き方はそのように自在に教育と労働を繰り返すようになるのかもしれません。知識と知恵の充電期間を持ちながら、その間に自分の新たな労働・仕事を展開するというのは、誠に面白い時代の到来とも言えます。ただ、漫然と3ステージを生きる時代は終わりました。高校生の時から、具体的な職業に関心を持ち、在学中から、考え動いているからこそ、次にくる仕事、行動も自ずから見えてきます。そういう意欲旺盛な高校生世代に刺激を与え、そしてこちらも刺激を受けながら、一緒に切磋琢磨することで、私はこれからの20年を生きたいものと考えています。体験談を交えた私の決意の披瀝になり、皆さんのご興味に役立ったかどうか。徳島の高校生を羽ばたかせる先生方の発奮に、何よりも期待しています。(2018-8-21  一部修正)

 

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