天皇誕生日を京都で過ごし、対話したあれこれ

平成天皇としての最後のお誕生日である12-23の祭日を京都で過ごしました。大学のクラス仲間2人と一緒に。平成天皇と美智子皇后様は我々世代にとって極めて重要な存在であることが、御代替わりが明確になって一段と分かってきたように思えます。とりわけその30年が「大災害の時代」と言わざるを得ず、天皇ご夫妻の、荒れる国土と困窮する被災民救済への懸命な祈りと献身的なお見舞い姿が目に焼き付いて離れないからです。私ども昭和20年生まれにとって、ちょうど一回り上の8年生まれの天皇は同じ酉年でもあり、ひとかたならぬ親しみを感じます。しかも私は天皇とは厚生労働副大臣の任命を皇居で受けた折に、直接言葉をかけていただき、皇后様とも任期中にお話をさせて頂いた機会が一度だけあります。そのお優しいお言葉遣いが今なお耳朶に残っているようにさえ思われます。平成の時代に入ると同時に衆院総選挙に出て落選した私は、足掛け5年の苦闘の末に初当選。爾来20年間を現役代議士として過ごし、引退後ちょうど満5年がこの暮で経ちます。文字通りこの30年が私にとっての政治家人生(前・中・後)の全てでした。それだけにより一層、天皇陛下のご苦労が偲ばれるというものです■この一年で三度目の京都ですが、今回初めて大悲山・圓通寺に行きました。ここは比叡山を借景に取り込んだ枯山水平庭の寺院として有名です。本堂の広間に座って見る比叡山の姿は見事な佇まいで迫ってきます。開け放たれた本堂は外の冷気が流れ込み、自ずから凛とし居住まいにならざるをえません。テープから流れるご住職の低く重々しい声の説明で、いかにこのお寺が京都の歴史と文化を護ってきているかについて知るに至りました。こんな経験は初めてです。このお寺は元をただすと、江戸時代初期(1639年)に御水尾天皇が造営された幡枝離宮跡といいます。その後修学院離宮完成後の変遷を経て、霊元天皇の勅願所となってから、歴代皇族の御尊碑が皇室ゆかりの殿舎である御幸御殿に祀られているといいます。帰ろうとすると、偶々北園文英住職自らが受付に座っておられるところに直面しました。あれこれと言葉を交わすうちに、この人が我々と全く同じ年生まれと判明。一段と親しみを感じました。寺院の在り方から始まって、現今の大学、政党、政治家論に至るまで様々な話題を交わした次第です。いかに現代日本が、とりわけ京都が、文明の危機に瀕しているかを述べられたのが印象に強く残りました■今回の京都周遊で初めて足を運んだもう一つの名所は、京都市内を一望できる「大舞台」です。清水寺の舞台の4倍半をも越える広さの木造の大舞台に上がると、京都市内のみならず大阪のビルまで遠望できるかのごとき眺望に驚きました。ここには国宝「青不動」(平安時代中期制作)が奥殿に安置された「青龍殿」があります。もともと、京都北野天満宮にあった木造大建造物で、戦後「平安道場」として警察の柔剣道場になっていたものを、平成10年に閉鎖し、解体処分をした後に移築再建したものといいます。さらに、ここには平安遷都の折に桓武天皇が築かせたという由緒ある「将軍塚」もありました。私としては、京都東山山頂にこうした京都ゆかりの歴史的建造物を集積させ、観光の新名所にしようとする戦略的思考に、今観光に取り組む者のひとりとして感銘しました。尤も、その庭の一角の目立つところに高村正彦元外相の碑が立っていたり、また目立たぬところに海部俊樹元首相の碑もあったりして、 お二人との往時の交流を思い出し、胸騒ぎを起こしてしまったのはご愛嬌でした■私の京都や奈良といった「古都行脚」は現役時代の半ば以降から始まり、すでに20年近く経ちます。以前にも書いたことがありますが、大学時代からの畏友・尾上晴久の誘いによるものです。彼は単身赴任先の三重・鳥羽から週末を選んで、この四半世紀ほど古都の神社仏閣巡りを展開。既に訪れること200回を超えていると見られます。お寺の、神社の故事来歴に呆れるほど詳しく、私などただただ恐れ入るだけです。いや、それだけならいいのですが、偶に魔が差して、仏像の芸術性などに異論を挟もうものなら、手痛い目にあってしまいます。つまり、日本文化の粋、日本芸術の伝統ーその寄って来たるところを理解しない政治家なんて問題にならない、と。私はついまた、宗教本来の目的と、その美観、芸術性とは分けるべしとの持論を持ち出すと、彼はそれは不可分のもので、分けようとする姿勢がおかしい、と責め立てられます。果ては、死後の世界をどう見るか、有と無のたてわけ、空観についてなどの捉え方を巡って議論をします。結局は不可知論めいた堂堂巡りになるのですが、そこは50年来の親友ゆえ、いつか来た道ならぬ、いつも辿る議論の楽しさで、時間を忘れてしまいます。かくほどに天皇誕生日の京都は楽しくかつエキセントリックに暮れていきました。(2018-12-25)

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