新たな社会保障の仕組み作りに一石投じる動き

結党記念日の直前に、11月15日、16日の両日にわたって、公明新聞に掲載された『2040年問題  新たな社会保障への一考察』と題する、公明新聞・ビジョン検討チームによる「安心の制度構築への提言」は、なかなかの力作だった。党そのものには改革に向けての姿勢が薄れてきてるのではないか、などと苦言を呈した私だが、この提言には諸手を挙げて賛同しておかねば、後輩たちに申し訳ない思いがする。公明党が誕生して55年。経済格差の波にさらわれ、最低限の生活の保障すら覚束ない人々に、今こそ目を向け、手を差し伸べねば、何のための公明党かという他ない。自民党と与党を組むということは、まさにこうした状況に陥っている人が多いとの現状を打開するためのものでもあるはずだからだ▼実はこの論文を目にする直前に、地元兵庫の最北部に位置する但馬地域の村岡町(合併後は香美町)に住む後輩から一本の電話があった。阪神淡路の大震災のあった平成7年に村岡町議に当選して二期8年の間、その職責を務めた西井秀一氏(62歳)である。畜産関係の仕事をしながら、獅子奮迅の議会活動を展開した勇姿は目に焼きつき心に長く留まっている。諸般の事情から議員を辞して、はや15年余りが経つ。その間、気にはなりつつも会う機会は絶えてなかった。その彼からの突然の声の便りは嬉しかった。「疲弊する中山間地域、停滞する日本に喝を入れ、多くの大衆を蘇らせるための唯一の手立てを考え抜きました」ー久闊を叙するのももどかしげに、懐かしい電話の声は弾んでいた。現在はトマト栽培など農業を幅広く手掛けているとは聞いていたが、日本の蘇生のためにどうすればいいかの政策を考え続け、戦略を練っていたとはつゆほども知らなかった▼「ベーシックインカムの導入です」ー山ほど障害はあれども、長年に渡っての試行錯誤の思索の結果は、これしかないというのが彼の結論だという。つい先日姫路で会い、懇談をした際に彼が考える導入への戦略の一端を聞いた。ベーシックインカムとは、政府が全ての人に必要最小限の所得保障を定期的に給付するというもの。膨大な財源を必要とすることやら、労働への意欲を削ぐのではないかとの観点から批判的な向きが一般的だが、ここ数年改めて注目を浴びてきている。政党では、旧民主党の一部に根強い支持の動きがあったり、小池都知事の肝いりで話題となった「希望の党」がその政策に入れ込んだことがある。西井氏はそうした点を全て分かった上で、いかに困難であれ、この施策を導入することで日本社会の窮状に悩む大衆一般を救うことが可能になるはず、と意気込む。そう簡単にことが運ぶと思うほど私も甘くはないが、嬉しかったのは彼の真っ正直な姿勢が持続していることであった。議員を辞めてからもひたすら大衆救済のために考え続けてきていることは凄い▼実は、公明新聞に掲載された「一考察・提言」の中にも、最後の結論部分に、最低生活保障が触れられ、「ベーシック・インカム」にまつわる考えが披瀝されている。ここでは、慶應義塾大の井手英策教授の「ベーシック・サービス」構想が取り上げられていて興味深い。現金給付が持つ難点、とりわけ社会的弱者の線引きが結果として社会的亀裂としての分断を生み出すことへの対策が述べられている。つまり、現金ではなく、医療、介護、育児、教育、障害者福祉といった「サービス」を、必要とするすべての個人に無償で提供しようというものだ。公明新聞チームは、弱者の明確化を掲げた自らの提言と方向性は異なるものの、敢えて井手構想は検討に値するとして評価する姿勢を取っていることは好ましい。井手氏は旧民主党のブレーンとして名を馳せた人だけに、今後の去就が注目されているが、幅広い国民的合意を培うために公明党政調、公明新聞チームとも議論の場を持って欲しいものだ。このあたりについて、西井氏も共鳴し、お互いにこれからの情報キャッチ、支援グループの構築などで協力し合うことを約束して別れた。何はともあれ、公明新聞記者や元地方議員という後輩たちに、格差社会打開に向けて懸命に頑張る姿が見えることに大いに勇気づけられている。(2019-11-26)

 

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