【104】「官邸がアホやから政治がでけへん」━━158日間の国会を概括する/7-26

⚫︎「党首討論会」での国民無視の虚しい風景

 誰しもが知る作り笑いの目立つ高市首相と、あまり皆が知らない苦悩の様子がありありの公明党の竹谷とし子代表。さる7月15日にテレビで観た「党首討論」での2人の女性リーダーの好対照な姿が印象に残った。全体で約1時間の中で終始わざとらしさが消えない笑顔で野党党首たちと応酬していた首相と、僅か4分間の持ち時間を「円安の影響で物価高にあえぐ家計支援を急げ」と厳しくぶつけたものの軽くいなされた竹谷氏。翌日の公明新聞の記事の「高市政権の見通し甘い 国民生活後回し 改めるべき」(時系列的には午前の中央幹事会での発言)との見出しがせめてもの慰めであった。首相就任後初めての長丁場の国会の最終盤で、睡眠時間がいかに少ないかを自ら言い出し、家事に取り組む自らのすがたを誇大に言いふらす━━こんな首相のパフォーマンスに苛立ちを覚えない方がどうかしていると思った人は多かろう。8日間の延長を含め158日間に及んだ特別国会を振り返って思うことは多い。

⚫︎監督のせいにしたプロ野球との類似性

 この通常国会、最初から異常だった。と、書きかけて、ん?おかしい、間違ったと気がついた。恥ずかしながら一瞬150日プラス1週間ほど続いたのは通常国会だと思いきや、それは一日で終わっていた。衆院選挙に突入して、その後に開かれた「特別国会」がやっと終わったのだ。召集日の1月23日に衆院解散がいきなり行われたのをつい忘れていた。僅か6か月ほど前のことが遠き昔に思われた。歳はとりたくないものである。

 ともあれ、異常続きの国会を作ったのは、異常な衆院選挙の結果だった。高市早苗自民党総裁が誕生し、通常国会招集日の〝電撃解散〟で自民党単独で3分の2を超える議席を奪った上での、自民党と維新による連立政権の誕生は過去の国会のいわゆる常識を壊し続けた。この辺りのことについては、25日付けの伊藤智永の毎日新聞コラム「土記」が痛烈だ。「何せ行政府の長が国会に出たがらない。議論を嫌い、一方的に話すか、ごまかす。議会の慣例を無視し『首相の命令や』でゴリ押ししようとする。批判には『私寝てないの』『家事も大変』『体が痛い』とSNSで愁訴する」と。

 僕は昭和44年に公明新聞政治部記者になっていらい、国会で歴代首相を見てきた。佐藤栄作さんから宮沢喜一さんまでは記者、衆議院議員候補者として。細川護煕さんから野田佳彦氏までは同僚議員として、そして安倍晋三首相が再登場して今に至るまでは一有権者として、ちょうど30人の総理を観てきたが、高市さんほど異常な人は初めてだ。なにしろ、自民党内部から、野球の監督を首相に例えて「間違ったサインを出す監督をいちいち気にしてたら試合にならない」との嘆き声が聞こえてきた。かつて「ベンチがアホやから、試合がでけへん」と皮肉った阪神のあの選手の迷言を思い出す。つい、ベンチと試合を置き換えてみたくなる。

⚫︎目に余った自維のゴリ押し

 この国会で目立ったのは、維新の横暴さである。自民・維新の連立合意に記載された法案のうち、衆議院議員定数削減法案と副首都法案は同党が強く成立を目指した。自民党は皇室典範改正案、国家情報会議設置法案、日本国旗損壊罪法案などに強くこだわった。さすがに与党だけで、少数政党に一方的に不利になる定数削減を通すことには無理があり、今国会では見送らざるを得なくなった。だがその分、維新の生命線とも言うべき副首都法案は最後の最後まで揉め続けた。土壇場では会期の再延長まで考えたようだが、無所属議員の一本釣りで2議席の差で自維与党は逃げ切った。

 首相の維新偏重ぶりは自民内にも反発を招かざるを得ないものだった。高市自民党は奇襲攻撃が功を奏し衆議院で大きな議席を得たのだが、参議院は少数与党のままである。150日間の国会会期の前半は超多数をいいことに乗り切ったものの、後半は無惨な体たらくとなった。大阪を「副首都」にして東京一極の弊害をカバーするとの建前とは別に、「大阪都」構想を蘇らせようとする維新執行部の本音はあざとい。既に過去2回の住民投票の結果で決着がついたはずのものに未だ拘り続ける。今回の国会最終盤でも、特別区設置の住民投票と地方選挙の期間が重複しないことをめぐっての攻防が焦点になった。大阪を舞台にした維新の執念は、一応のメドなど取り合わぬ雰囲気で早くも波乱含みの様相である。

⚫︎公明、立憲、中道のこれからの議論に注目

 さて野党の中核・中道と公明、立憲民主の三党のことだ。参院で自民党が過半数に足らぬ2議席を無所属から引っ剥がす離れ技をやった一方で、衆院で中道は同じ2議席が足らず内閣不信任案が提出出来なかった。出す出さぬの議論とは別に、2議席の今風悲喜交々の姿ではあった。衆議院49議席の中道では高市政権ノーへの意思表示を単独で示せないのである。

 それにしても皇室典範改正論議における衆院中道と参院立憲と公明の意思の食い違いは苛立たしいものだった。このテーマでの公明党サイドの結論は谷合正明会長の意思表明に明らかなように、とりあえずの課題に対応したから、皇位継承問題はこれから取り組むということだろう。それに対して立憲民主党は、男系男子にこだわる自民党に真っ向勝負で反対している。この対立は国民世論を反映しており、自然なものだと受け止めたい。問題はこれからである。暑い夏を返上して、三党が日本の課題解決に向けて徹頭徹尾の議論をしてくれるものと期待するしかない。(2026-7-26)

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