モンゴルにも日本人が捕虜となって抑留されていた━━この事実を知っている人は極めてまれです。ジャーナリストの井手裕彦さん(大阪読売新聞の元記者)が角川新書からこのたび出版された『モンゴル抑留』はこの事実を克明に追っています。私も読んだ上で、司馬遼太郎さんの『モンゴル紀行』と比較して、いかに鋭く日本とモンゴル両国に横たわる問題を描いているかについて読書録(6-25付け No.98)に書きました。昨日私の所属する一般社団法人「未来を創る新教育推進会(会長 相島淑美神戸学院大教授)が、井手さんを招いて講演会をやりました。ここでは私が述べた講評(事前にまとめたものを当日配布)を披露します。写真下は壇上での著者と私の2人です。
⚫︎厚労省、外務省への厳しい指摘に対応を約束
私は衆議院議員を20年ほど務めましたが、その間に外務委員会、安全保障委員会に長く席を置き、厚生労働副大臣を一年だけやらせていただきました。ですが、残念ながらモンゴルについては何ら関わりを持たずに過ごしました。今回、井手さんの本を読ませて頂いて、厚労省や外務省がいかにも無為無策であったことを知った次第です。
実はこの本で著者は厚労省には37箇所ほど、外務省には12箇所ほど厳しい批判の刃を向けています。厚生労働省の宮崎淳文現官房長は私の元秘書官を務めてくれていました。今回彼に意見を求めましたところ「井手様にはいつも貴重な情報を提供していただいており、深く感謝しています。しっかりと気を引き締めて今後取り組みを進めていきます」とのことでした。
外務省関連については、日本とモンゴルの関係における、ソ連の影に隠れてモンゴルは交戦国になっていない歴史的事実、モンゴル軍のことが触れられていない教科書などの見直しといった重要な問題提起に、強く私は賛同します。また、日本モンゴル友好議連の長島昭久会長(衆議院議員)にこの辺りについて伝えましたところ、必ずや外務省、文科省に井手様のご意志を伝えるとともに、共々に問題解決に向けて尽力させていただきますとのご意向を表明して頂いたこともお伝えいたします。
⚫︎モンゴルとの友好に満ちあふれた司馬遼太郎の本
私は実は書評を趣味にする政治家です。モンゴルをめぐっては、司馬遼太郎さんの『モンゴル紀行』と半藤一利さんの『ノモンハンの夏』の2冊が有名です。井手さんの本を読んだのちに、この2冊をあらためて読み直し、3冊を読み比べました。
まず司馬さんはご存知のように大阪外大のモンゴル語学科出身です。根っからのモンゴル大好き人間ぶりを余すことなく披瀝しまくっています。実は『モンゴル紀行』文庫版の163頁には東京外大のモンゴル語科出身の留学生の話が出てくるのですが、この富永君という人は僕が学生時代に付き合った懐かしい友です。司馬さんは「彼の笑顔に青春を感じた」と書いています。モンゴル好きの若い同好の士を見つけた率直な喜びが彷彿として伝わってきます。
日本人捕虜の手になる国立オペラ劇場のことも出てきて、「言い難い感情を持った」とか、「国家次元の問題よりも人情としてやりきれない思いを持たざるを得なかった」などといった言い回しが出てきますが、全体としてモンゴルという国へのほのぼのとした友好感情が溢れ出ている素晴らしい本です。私は司馬さんの本では「街道を行くシリーズ」が好きですが、『アイルランド紀行』と並んで『モンゴル紀行』が大好きです。(以下つづく 2026-8-1)