分岐点としての2030年と、そこに至る10年間(上)

2020年は、カルロス・ゴーン被告(元日産自動車社長)のレバノン逃亡という事件で幕を開けました。何が起こるかわからない、という時代の空気をそのまま反映させた衝撃が日本中に走り、今なお余韻が燻っています。国際社会では、昨年来の「米中衝突」や「北朝鮮の暴発」に加え、「イランと米国との一触即発」など相次ぐ不安要因が顔を覗かせています。内外共に先行き不安だらけというのが実態です。こんな年の初めに、あらためて聴こえて来るのが、2030年は地球と人類がこのまま存続出来るのか、それとも滅亡の一途を辿るのかの分岐点だということです。つまり、あと10年が生き残りへの対応策を講じる最後の10年間だとの認識です▼「持続可能な社会」(SDGs)に向けての国連の試みは、本格的には2016年から(問題提起的には20世紀最終盤から)始まり、2030年までの15年間に人類が取り組むべき課題解決に向けての17の目標を掲げてきました。しかし、この問題設定(代表的なものは❶気候変動❷貧困❸人口爆発❹テクノロジー❺食料、水不足など)は人々の胸にうまく届いているでしょうか。これまでのところ、ノーとしかいえないような状況が続いてきています。その原因の一つは「持続可能」という言葉にあるように私には思われます。ここは「滅亡する地球・人類」とストレートにいった方が分かりやすいといえるに違いありません。その意味で、新年早々のNHK総合テレビのNHKスペシャルが放映した『未来への分岐点』は、観た人々の心に確実に届く衝撃的な響きを発信していました▼「今地球が不安定化する瀬戸際にあることは科学的に明らかです。これからの10年間が地球と人類の未来を決めるのです」(科学者 ヨハン・ロックストローム)「世界は限界に近づいています。今すぐ行動に移さなければ手遅れになってしまいます」(ジャーナリスト トーマス・フリードマン)ーこの番組の冒頭を飾った二人の言葉は極めて印象深いものがありました。とりわけ地球温暖化による気候変動は、北極と南極の氷の融解による気温上昇と海面上昇によって、地球が〝灼熱地獄〟への待った無しの危機的状況に追い込まれることを見事なまでに物語っていました▼スタジオのコメンテイターたちのうち、私が耳をそばだてたのは、シニア世代を代表した宇宙飛行士・毛利衛さんの「高度成長時代を牽引してきたシニア世代を攻撃しようとしているのでは」との冗談めかした本音発言でした。今のシニア世代すなわち団塊の世代の老人たちは確かに高度経済成長時代に苦労はしたものの、美味しい果実をそれなりに享受して後衛に退こうとしています。一方、その子どもや孫たちであるジュニア世代は、とんでもない希望なき不安を押し付けられつつ前面に立たされようとしているのです。若者を代表した20歳の青年がこれからの10年をどう生きるかと問われて応えた言葉がとても印象に残りました。あらゆる事態に「見て見ぬ振りをしない」といったのです。これこそ、これからの10年のキーワードだと同感します。この言葉は、今私が行動に起こそうとしていることと、文字通り共振したのです。(続く=2020-1-16)

 

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