少し前のテレビ放映(2-21)になりますが、NHKテレビBS1『自衛隊が体験した離島防衛のリアル』なる番組があり、興味深く見ました。以前にこの欄で報告した『自衛隊が体験した軍事のリアル』の姉妹編とでも言うべきものです。前者が集団安全保障の一環としての日米共同軍事演習だったのに比して、こちらは日本防衛の枠内における米軍支援を受けての共同軍事演習の実態が克明に報じられていました。場所は、ロサンゼルスの南にあるキャンプ・ベンドルトン。2年前の2019年1月に陸上自衛隊(水陸機動団)600人が40日間参加した際のものです◆「離島防衛」と言っても、現実に最も有事が起きうる可能性が高いのは、勿論「尖閣諸島」です。2010年に発生した中国漁船衝突事件以来、この10年余というもの、中国漁船やら同国海警局所属の船舶の侵出が日増しに増加しており、日本の海上保安庁船との一触即発の事態が懸念されています。具体的には、中国漁船や海警船とが数十隻も混在した形での「キャベツ戦略」なる用語で呼称される不気味な挑発が常態なのです。◆尖閣諸島を巡っては、私自身も現役の頃、日本の支配下にある島らしく、船舶が停泊できるような港施設を作るなり、常駐の駐在員を置くべしとの主張をしてきました。しかし、現実にはそれができぬままいたづらに月日が経ち、現時点では島嶼周辺を中国の船舶で包囲されていて、およそそれは不可能と見るのが現実となっています。さてどうするのでしょうか。先のテレビ放映を見ている限り、敵に島が占拠されたという事態を想定し、どうこれを奪回するかにばかり集中しての対応ぶりの演習でした◆これではあたかも戦闘対処あるのみと客観的には写ります。一方で、先の中国の王毅外相の日中共同記者会見での傍若無人の言動(2020-11-24)に、何も言えずに含み笑いのでやり過ごした茂木外相の不可解な態度が問題視されました。この外交戦なき茂木外相の態度と、日米共同軍事演習のリアルを思い浮かべる時に、どう理解すべきか、判断に苦しみます。まさか、わざと中国側に先に手を出させようとの考え抜かれた魂胆であろうとは思えないのですが。この背後には、日常的な国内議論の不足ぶりがあると私は見ています。コロナ禍の現状にあっても、衆議院外務委や安保委、そして参議院外交防衛委の場で、あらゆるシュミレーションを想定した議論が日常的に展開されていれば、外相のあのようなボーンヘッドは起こり得ようがなかったと思うのです。(2021-4-6)