13日と14日の二日間、衆議院予算委員会の質疑をほぼ全部見聞きした。一日7時間の合計14時間。自宅のソファに座って自由な雰囲気で見聞きするのと、答弁する首相は言うに及ばず、現場でじっと座ってるのも大変だなあ、と改めてしきりに思った。かつてその場にいた人間からすると、頭をよぎることはまことに多い。初めて予算委の取材で、先輩の書いた原稿を持って走ったことに始まり、閣僚が自分で答えられず、事務方に振った姿を見て呆れたこと、テレビに映る場所を探して、本来は座ってはいけないところに座ろうとした厚かましい議員を見てしまったことなど、あげるとキリがない◆そんな中、佐藤栄作首相から、今の岸田首相までのこの国のリーダーの答弁を聴いてきたのだが、岸田氏はなかなかやるではないか、との印象が強い。滑舌の良さに始まり、テキパキとした対応ぶりなど、僅かの機会を見たに過ぎないが、ひとまず合格点はあげられる。とりわけ、18歳以下のこどもたちへの10万円の給付問題での柔軟な姿勢は好感が持てる。もちろん、制度設計の杜撰さは持ち出せばキリがないが、新型コロナ禍の緊急事態に、完璧を求めても無理があろう。激しい野党の要求に頑なでない態度でむしろ先手をとったことは評価出来る◆一方、野党の攻め方については、立憲民主党のこれまでの追及型が提案型になるのかどうかが、注目されてきた。8人の質疑を聴いた限り、混交型といえ、滑り出しは悪くないと思う。とりわけ、小川淳也氏の「経済」分野、岡田克也氏の「核兵器禁止」をめぐる質問には耳をそばだてた。かつての野党第一党だった日本社会党のような〝不毛の対決〟は非生産的なものだった。その背景には、その頃の野党には、労働組合など左翼的立場出身者が多かったのだが、今日では官僚出身が多いことと無縁ではないのでは、と思われる◆もう一つ、注目されたのは「日本維新の会」(維新)の、衆院選躍進後の初デビューぶりだった。大阪という地方に依拠するこの政党は、かねて構成メンバーの玉石混交ぶりが目立つと揶揄されてきたが、14日の4人衆は充分「玉」に見えた。維新の政党としての仕組みを解説してみせたり、脇でフリップを持ってサポートする議員を紹介するなど、その〝表現の有り様〟は新鮮だった。もちろん、中身も。半導体産業の現状とこれからへの警鐘を冷静に提起したり、「2025大阪万博」への期待をさりげなく披露するなど、見聞き応えがあった。それにつけても、質疑者の背後に座る議員(テレビカメラの位置から、殆ど自民党)たちの姿の辛そうなこと。見ていて気の毒に尽きる。そこで、提案したい。一つ一つの質問についての〝寸評〟を求め、公開してはどうか。明らかに内職をしてたり、眠さを抑えるのに必死であったり、テレビ映りを気にしているだけよりも、有意義だと思うのだが。(2021-12-15)