●新聞、雑誌の5メデイアで取り上げられる
私が昨年末に『77年の興亡ー価値観の対立を追って』(出雲出版)を上梓してから3ヶ月あまり。1-14に「産経」のサイト「ニュースマガジン」で取り上げられていらい、2-3の「読売」、2-23の「日経」(ポリテイカルナンバー)、3-13「道新」の大型コラム「時代は変わる」へと続きました。その間、週刊エコノミスト3月1日号(2-21発売)のコラム『東奔政走』では見開き2頁にわたって大きく論じられもしました。
同著は、明治維新を起点に、先の大戦における敗戦を挟み、今日までの77年という二つのサイクルを、価値観の対立を基軸に振り返ったものです。特に後半のサイクルにおける中道主義・公明党の政治選択を具体的に追うことに主眼をおいています。『東奔政走』で平田崇浩氏(毎日新聞世論調査室長兼論説委員)は、私の「自民党の公明党化を狙っていながら、気がついたら公明党の自民党化が進んでいたと言われてはいないか」「改革よりも安定を叫ぶ選挙は明らかに目的を取り違えている」との発言を引用しつつ、「13年に政界を退いた後も発信を続け、第2サイクルの終わる節目に、中道主義の原点に戻れと公明党を叱咤する著作の出版に踏み切った」と紹介してくれました。過不足ない最小必要限の発言の引用であり、私の出版の背景も見事に切り取った展開ぶりは、さすがに現役バリバリの論説記者らしく鮮やかなお手並みでした。
●中道主義価値観への疑問を提示したコラムへの「反論」
その上で、彼は「赤松さんには申し訳ないが、公明党の中道主義が価値観対立のフェーズを変えるとは思えないし、政治の安定を叫ぶ公明党にその気概は感じられない」と、バッサリ切っています。この見方は残念ながら概ね「世の常識」でしょう。ただ、一方で保守主義、革新主義、リベラルの現状が日本の大衆救済の価値観たり得ていないということもまた、「世の流れ」だと思われます。つまり、現状はどっちもどっち、〝いずれも同じ秋の夕暮れ〟ということではないでしょうか。
だから、今の政治に、政党に、政治家に期待はできないと、いわゆる無党派層に投げやり的共感を抱くのは時期尚早だと思われます。中道主義の政治選択は私が自著で紹介したように、この20年それなりの結果を出してきました。福祉政策における子育て・初等中等教育への経済的支援は目を見張るものがあり、高齢者対策の遅滞を補って余りあるといえます。また、外交・防衛分野では「匍匐前進」ではあるものの、残酷な国際政治のリアルに対応してきました。自民党の暴走を止める一定のブレーキ役をも果たしてきたといえると思います。この辺りについては、2-16毎日新聞サイト『政治プレミア』や、3-20の朝日新聞サイト『論座』で私が述べた通りです。特に『論座』では詳しく触れました。
作家の佐藤優氏が、公明党は宗教政党としての側面をもっと顕在化させるべきだとのアドバイスを以前にどこかで書いていました。この角度からの指摘に、公明党は真正面から答えずに、保守自民党と一緒に政権与党を組み続けることは、いささか分かりづらいと私には思われます。自公政権20年でうまくやってきたのだから、余計な波風を立てずともいいとの判断があるのかどうか。そのことが結果として「政権の安定」をもたらしてはきていたとしても、国家運営のジリ貧状態を招いているのかもしれないことが懸念されます。
●「理想主義の色濃い現実主義」こそ中道の本質
この国をどういう方向に持っていくのか、との自公両党間の議論を真正面から行うーこのことによって中道主義の効用が自ずと鮮明になるはずと言うのが私の見立てです。中道主義、特に日蓮仏法に淵源を持つ中道主義は誤解を恐れずに言うと、理念的には、リベラルで、政治行動の上では保守に傾きがちです。これは言い換えると、理念は理想主義的で行動は現実主義的ということかもしれません。敢えて言えば、従来の価値観とは次元が違って、旧来の価値観をケースバイケースで使い分け、それぞれを生かす異次元のものだともいえます。例えば、異なった個性を持つ子どもたちの特徴を伸ばし育てる親の知恵のようなものだといえましょうか。
具体的な政治行動は、時々の課題にイエスかノーで迫られるわけですから、二つの中間と言うものはなく、どちらかの色合いを強く持ったものに帰着していくのです。私はそれを「理想主義の色濃い現実対応」だと表現したいと思います。足して2で割る中間主義ではなく、〝自然と共生する人間観〟に基づく人間主義が私たちのいう中道主義であり、その視点を持った政治の展開こそ今最も求まれれているものだと思います。
今の世界を見渡したときに、これからの時代を開くに違いないと期待し得る価値観だと私は思います。であるがゆえに、後輩たちに自信を持ち、誇りを持って、中道主義に立ち帰れと叫びました。この点、平田氏のいう「気概が感じられない」かどうか。これからしっかりと見定めていく所存です。
ロシア・プーチンの対ウクライナ侵略で、「目には目を」のごとく、戦争拡大に一方的に走るのではなく、また「無理が通れば道理が引っ込む」のように、座して傍観するのでもない対応こそ、中道主義の出番だと、私は確信します。自公両党が展望を持った真剣な議論をしたうえで、国際社会に積極果敢な平和に向けての提案をして、ロシアの悪虐非道を押さえ込む外交を展開すべきです。第三次世界大戦に突入する一触即発の環境は残念なことに醸成され続けています。早急な対応、行動が今ほど求められている時はないのです。(2022-3-29)