一方、野党はといえば、選挙前から6議席増の日本維新の会(以下、維新と略)の躍進と、逆に6議席減らした立憲民主党(以下、立憲と略)の低迷ぶりが目を引く。昨年の衆院選と同じで、選挙前から概ね予測されていた通りの結果となった。衆院選の結果、代表が交代した野党第一党の立憲は、野党結束の動きにも精彩なく、ズルズルと後退した印象は拭い難い。それに比して、維新は、選挙区でこそ東京、京都と狙った議席が思うように取れなかった(4議席)ものの、比例区では6年前と比し、300万票ほど上積みし、784万票を獲得。3議席から8議席へと伸ばしたことは、全国に支持者が広がり増えたことを意味する。それでも「自民党は圧倒的に強かった。野党は力不足。負けを認めざるを得ない」(松井一郎代表)とのコメントは立憲に代わる野党第一党のセリフのように聞こえた。「勝者のいない選挙」(小林良彰慶大名誉教授)との位置付けが霞むほど、同党の存在感は高まったと、私には思われる。
この突出した維新の躍進は先の衆院選に続くもので、同党がこれからの日本の政治の動向に強い影響をもたらすことは間違いない。尤も、この党には危うさもつきまとう。松井氏が代表を辞して、この秋に後任を選ぶ選挙が行なわれるとのこと。そうした動きを経て、明年の統一地方選結果の推移を見定めるまでは、全国政党としての安定感は定着しないのではないか。大阪という一地域に依拠する特殊な政党から脱皮して、普通の政党としての評価が落ち着くまでにはまだまだ時間がかかるだろう。この一年における衆参両院選挙の結果、一般有権者の間における維新への期待は並々ならぬものがあるが、同党がそれに応えられる政党なのかどうか。まだ予断は許さないという他ない。
維新の動向は与野党にとっても注視の的だが、政策展開の最大の関心は、「憲法」に違いない。かねて同党は積極的な9条改憲論を振りかざしている。この点に絞れば明らかに自民党と同根であり、与党的立ち位置にある。一方、与党公明党は、環境権などの「加憲」ではあっても、本格的な「改憲」ではない。とりわけ9条への「自衛隊明記」にすら慎重で、与党内不一致状態が続いている。一律に改憲に前向きな政党と、括ってみることは間違いである。
今回の選挙結果から、「改憲」に前向きな政党4党が93議席を獲得し、非改選84議席と合わせて、改憲の発議に必要な参議院定数(248議席)の3分の2(166議席)を超える177議席となった。衆参両院での改憲への議席体制が整った。これを過大にみる向きがあるが、各党の思惑の落差に留意する必要があろう。
れいわ新選組が3議席を新たに得て、合計5議席を有したり、参政党が初議席を持ったことなど、少数政党の台頭をどう見るか。少なくとも与党関係者は、今の自公連立政権への不満の現れだと見る正視力が必要だと思われる。(2022-7-30 つづく)
※これは、朝日新聞Webサイト『論座』政治・国際欄(7月22日付け)に掲載された私の『公明、自民両党が参院選後にやるべきこと〜内外に山積する課題を前に』を転載したものです。