【55】確たる国家像が見えないとの「連立政権」への不満——朝日web『論座』への寄稿から④/7-31

 参院選が終わるまでの間、これから3年は大きな国政選挙のない平穏な時期が続く、という見方が専らだった。政界関係者の希望的観測だろう。安倍元首相という隠然とした実力者の死がこれからどれだけ影響をもたらすか計り知れない。国民の間には、選挙の有無よりも、これからの日本の進む道をどう切り開いていくのか、政党、政治家の動き、とりわけ自公連立政権に望むところはあまりにも大きいのである。

 この数年間というもの、選挙のたびごとに、私が友人たちから「自公政権はこの国をどこに導こうとしているのか、よく分からない。両党に確たる一致したビジョンが見えないではないか」という疑問を聞かされた。自民党には保守独自の国家観があろうし、公明党には支持母体の思想に基盤を持つ中道政治像がうかがえる。それは分かる。だが、成り立ちの違う二つの政党が連立を組んでいくと、両者に忖度や遠慮がどうしても働き、結果は曖昧なものになる。現に先行きが不透明ではないか、との懸念の表明である。

 この議論、公明党的には、「自民党の行き過ぎにはブレーキをかけ、足らざるところはアクセルを踏むとの役割を発揮するから見ていてくれ」という〝定番〟に落ち着く。私は「政治はよりマシ選択」との言い回しを切り札に使ってきた。だが、それではもう追いつかない。

 終わりの見えないコロナ禍とウクライナ戦争。果てしない財政悪化と物価高。中露朝といった強権的専制国家群に囲まれた日本。いつ何時、「ウクライナ」状況が我が身に降りかかってくることにもなりかねない。経済、防衛の両面で、「安全保障」の本格的展開は待ったなしなのである。争点が見えないとされた今回の選挙でも、緊急避難的消費税下げは与野党間で、いわゆる「敵基地攻撃能力」は与党間でも意見が分かれた。

 こうした問題を始め山積する課題の解決に向け、今こそ、自公両党の間で徹底した議論がなされるべきではないか。現状は微妙に食い違う点が少なくない。細かい点を曖昧にし、与党間の結論を先送りにすると、国の方向を過つ。協議をしても、全てで一致するわけではないのは当たり前だが、少なくとも双方の理想は理想として掲げ、現実的に合意に至った経緯を公開すべきである。先の「安保法制」では、集団的自衛権の行使容認をめぐって、自公の違いを踏まえつつ妥協をすることで、当面の課題を乗り越えた。この例に見習って、「財政」で、「エネルギー」で、「社会保障」で、合意を見出して、連立政権の方向を明らかにする。そして国家ビジョンの創出に繋げていく。そのための大議論を開始すべきだ。

 選挙直後に開かれた岸田、山口両党首会談では、お互いの選挙協力を称え、労う場になったことが伝えられた。また、7月20日にも今後の政権運営について、衆院選後の政権合意事項を確認しあった。だが、これだけでは物足りない。相互支援は選挙だけで終わってはならない。重要な政策課題をめぐって異論をぶつけ合い、調整を目指す検討チームを直ちに作ろうとの合意ぐらいして欲しかったと思う。(2022-7-31  この項おわり)

※これで、朝日新聞Webサイト『論座』に私が寄稿した「公明、自民両党が参院選後にやるべきこと〜内外に山積する政策課題を前に」(7-22付け)の4回にわたる転載を終わります。

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