【67】ノーベル賞受賞科学者と小中高生たちとの率直な対話から/9-26

大隅良典さん(77)と初めてお会いました。6年前にオートファジーの研究で、ノーベル生理学・医学賞を受賞した科学者です。オートファジーとは、細胞自身が持つ、細胞内にある不要な物質を分解する役割のこと。人間存在は膨大な細胞から成り立っており、新旧の細胞が一定の時間を経て、全て入れ替わる仕組みを持っていることが知られています。そのメカニズムを解明してみせたのがこの人だと、私は理解しています。大隅さんは、受賞後「大隅基礎科学創成財団」を設立し、基礎科学の振興に尽力する一方、小中高生たちとの対話、懇談を通じ、科学者の育成に全力をあげています。昨25日には、兵庫県姫路市のコンベンション施設・アクリエで開催。私はそこに大勢の未来の科学者のたまごたちに混じって参加してきました▲『未来の科学者たちへ』はこの人と細胞生物学者で歌人の永田和宏さんとの対話本ですが、私は友人(大谷清・同財団常務理事)の勧めで読み、既にこの読書録に紹介しています(No14/2022-1-3)。この本は、「科学者の卵」を揺籃させる働きは勿論のこと、私のような政治家にも科学することへの刺激を与えてくれました。そして、政治の基本である議論の大事さを覚醒させる大事な役割も持っています。そんな風に読んだ私に、ぜひこの機会を逃さず、見て聞きに来るようにと誘ってくれたのが前述の大谷氏です。大隅さんのお話ぶりは、先日のNHKの解説番組で聞いた通り、優しく静かな語り口調で、心の襞に食い入るものでした▲短いお話の後は質疑応答。「ノーベル賞を取るにはどうしたらいいですか?」「難しい壁にぶつかった時に、どんな強い気持ちを保ってこられましたか?」などといった質問に、大隅さんは丁寧に答えていました。「苦手だからやらないとか、役に立つかどうかの観点だけではいけないよ」「私の進んできた道は失敗ばかり。失敗を恐れてはいけない。何をそこから学ぶかが大事」などと大人たちにもグッと迫ってくる回答でした。尤も「ミケランジェロとダビンチとどっちが好きですか?」との女の子の質問には、タジタジとなる(と思えた)場面も。どちらにもいい側面があり、どっちとも言えない、というような言いぶりをモグモグと。ここはズバッと答えたら、と勝手な思いが胸に去来したことは否めず、大隅さんのお人柄が一番出たところかもしれません。面白かった▲最後に高校生と思しき男子が、英国のエリザベス女王と安倍晋三元首相の死を取り上げた質問には、「おっと」と色めきたつ思いが。同じように、元首に国王、天皇を抱き、議会制民主主義の元にある両国で、英国に比べて日本の「国葬」が大変に遅れたのはなぜでしょうか、と訊いてきたのです。賛成の立場からの質問であったからでしょう、大隅さんは「私は個人的には反対です」ときっぱり。議会での議論がもっと必要。手続きに問題があるやり方には反対ですと明快に述べていました。質疑終了後に、直接の対話を求める長い列ができました。その間、私は大谷氏や、姫路商工会議所の斎木俊治郎会頭と雑談していましたが、姫路の淳心学院同窓の2人は参加者が満席だったことにホッとしたようで、「姫路も捨てたものではないね」などと妙な満足感を率直に吐露していました。30分ほど待って、初対面の立ち話。一学年上の同い年。語りたいことは色々ありましたが、未だ実験会場に向かわれる大隅さんには邪魔になります。挨拶の終わりに「安倍国葬には、公明党としては賛成ですが、私も先生と同様に反対です」と伝えて、別れました。(2022-9-26)

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