【70】中国と共にロシアの〝草刈り場〟になるアフリカ/10-17

    先日、NHK総合テレビ『クローズアップ現代』で「ロシアが友好国を拡大?」と題した、ロシアのアフリカ進出の実態を描く放映を観た。正直驚いた。それは、アフリカにおいて、ロシアに親近感を持つ国が意外に多いという事実である。この地域では中国の進出が激しいということはかねて知られてきた。習近平氏の登場(1912年)と共に、「一帯一路」構想が打ち出され、いにしえのシルクロードにちなみ、地続きのヨーロッパや海路でアフリカ方面にその手をのばし、経済協力路線を敷く。その一方、PKO(国連平和維持活動)活動にも熱心に取り組み軍事協力に勤しむことで、経済、軍事両面から関係強化を手がけていることは周知の事実だからだ。ところが、そのテレビ放映では、ロシアもこのところ急速に進出の度を加速化しているということを明らかにしていて注目された◆契機となったのは、2014年のロシアの「クリミア併合」。国連内において、反対する国々が多いことからロシアのプーチン政権は孤立化への危機感を抱いた。いらい、多数派工作をあの手この手で進め、2019年には全てのアフリカ諸国を集めたロシア・アフリカ経済フォーラムを開催するに至った。その甲斐あってか、この3月のウクライナ侵攻の際に、国連におけるロシア非難決議に賛成しなかった国がアフリカだけで、26ヵ国(反対1、棄権17、欠席8)にも及んだのである。もちろん、その理由は様々だろうが、テレビ放映で取り上げられていた国・マリは、イスラム過激派による国家危急の折に、かつての宗主国フランスが何もしてくれなかったのに、ロシアはあれこれと世話を焼いてくれたと伝えていた。ある弁護士がフランスへの不信感を述べる一方、ロシア支持の理由を表明、それをSNSなどで拡大する様子が紹介されていた◆ただし、その援助の実態を見る際に注意を要するのは、ロシアが「ワグネル」と呼ばれる「傭兵」集団を使っているとの疑念である。そのあたりをフランス軍高官の追跡調査で明らかにしたり、ある元傭兵を登場させ、証言を得ていた。そこでは、「ワグネル」が実質的にロシア政府の手で作られた準軍隊であること、高額の報酬を得られる戦闘プロ集団であり、強権的政府を持つ国々に調法がられていることなど興味深い事実が次々述べられていた。とりわけこの軍事集団によって数多い市民が巻き添えになって犠牲になっていながら、その責任の所在が不明だという衝撃的な事実にもふれられていた。また、マリと同様に「ワグネル」の関与が確実視されている近隣諸国が他に6ヵ国、軍事協力関係を持つ国が34ヵ国にも及ぶとのことにも。現在のウクライナ戦争にあっても、すでに一部では「傭兵」の活用も取り沙汰されている。プーチン政権が正規軍の補充に「予備役」を充てようとするものの、「兵役拒否」のために、国外に避難を目論む動きがそのことを裏付けているとも見られる。事実関係は判然としないが、あながち、事実無根とはいえないようである◆中国が両刀使いよろしく周到な準備を持って、アフリカ各国に浸透しているものの、この国独特の乱暴さが災いしているところも散見される。その間隙を縫って、ロシアが独自に進出をしているのかもしれない。アフリカと一口で言っても、その実態は低開発状態で極貧に喘ぐサブサハラ地域の各国から、都会と農村の格差はあれ、今や着々と生活向上を果たしゆく南アフリカ、ルワンダなどまで千差万別である。現実は、経済、軍事双方で面倒見のいい中露両国に身を委ねる国が着実に増えている。先のテレビでブルキナファソの外相が、インタビューに、どの国とも友好関係を持つと「建前」を口にする一方で、「この苦境から抜け出すためには、棘のある枝でも掴むしかない」と、手を差し延べてくれる国に頼らざるを得ないという「本音」を吐露していたのが印象深い。21世紀も中盤に向かって、アフリカが専制主義国家進出の〝草刈り場〟になろうとしている現実は厳しい。(2022-10-17)

 

 

 

 

 

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