一昨年末に私は『77年の興亡』を出版し、2022年が歴史的大転換期の始まりになろうことを予測した。それは、明治維新からの77年目の昭和の敗戦に続く、二つ目の77年の区切りになる2022年が転機となるとの自らの〝仮説〟を確信したからだ。この見立ては、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻という出来事で不幸にも裏付けられてしまった。いらい10ヶ月。未だこの攻防は続く。新年の日本の全国紙5紙は、それぞれ、日本社会の変化や国際社会の枠組みの変貌について、連載で取り上げている。ここでは、2回に分け、元旦号(「読売」は2日付け)の内容を概観する◆「朝日」は、「灯(ともしび) 私のよりどころ」と題するインタビュー構成の連載である。最初はベラルーシのノーベル賞作家アレクシェービッチ。彼女の『戦争は女の顔をしていない』は強いインパクトを持つ。ウクライナ侵攻について、「人間から獣がはい出している」と表現。「私たちが生きているのは孤独の時代。私たちの誰もが、とても孤独です。人間性を失わないためのよりどころを探さなくてはなりません」と述べ、そのよりどころは、「日常そのものだけ」で、「人間らしいことによって救われる」という。いかにもこの作家らしい結論は、私には物足りさが残る◆「毎日」は、「『平和国家』はどこへ」。安保3文書の改定は、「『盾』だけでなく、『矛』を持つ方向に、かじを切った」として、水面下での日台の軍事連携を追う。台湾有事に向けて意思疎通の道を探ろうとすると、自ずと中国の反発を招くリスクを当然伴うことに。初回は、台湾在留邦人の退避計画が始動したところを描く。「平和国家」日本に危うさはないのかを問う。日台中関係の現実を暴く深い奥行きを持つ連載になるかどうか。ここに私は注目したい◆「読売」は、「世界秩序の行方」。ウクライナ戦争で崩壊したポスト冷戦構造はどうなるのか──米国主導の後は?日本の戦略はどうあるべきか?がテーマ。第1部は、経済をめぐる攻防で、初回は、バイオ分野をめぐる米中覇権での激突。世界中のゲノムデータや先端技術を中国が強引に蓄積しているとの日米共通の懸念に迫る。世界秩序は米国一極集中から、米中二極化を経て、中国主導となるのか?いや、むしろ人口で中国を抜く勢いのインドが主軸との見方が私には気になる。(2023-1-4)