【84】新たな指標と新しい分布図──新年の全国紙連載読み比べ(下)/1-5

 つぎに日経。「New World  分断の先に」と題して、ウクライナ戦争で、停滞を余儀なくされる世界のグローバル化に的を絞る。初回は、世界を繋ぐのは、イデオロギー対立を超えたフェアネス(公正さ)だとの視点が目を惹く。日経独自に学者と組んで新たに「フェアネス指標」なるものを作った。①政治と法の安定②人権や環境への配慮③経済の自由度など10の指標を用いて算出した評価をもとに、今ある国家の位置を複眼で見極めようとする。この指数は概ね民主主義国家が高く、専制国家は低い。だが、それが低い中国との貿易が盛んな国の「経済的リスク」は高くなる。日本もサプライチェーン(供給網)の依存度を適度にしないといけないとの指摘である。これを自公の親中派はどう受け止めるか◆「産経」は、「民主主義の形」。中露の専制主義勢力の横暴な振る舞いの前に、民主主義の価値が問われている。「世界の自由民主主義は大きく衰退した」との世界地図(V-Dem研究所の「デモクラシー・レポート2022」を基に産経が作成)によると、世界179ヵ国・地域は、権威主義国90対民主主義国89の真っ二つ。世界人口で見ると、権威主義国家は現在70%54億人を抱えるという。一回目のスタートは、「米議会襲撃で警官が得た『教訓』」から始まり、「政治を覆う諦念」で終わる。さまよう民意の前に、ネット時代の模索がこれから始まるとの方向性は興味深い。扱い方如何で、世界は大混乱に陥るかもしれないと危惧される◇さて、このように追ってくると、全国紙5紙のうち、「朝日」を除く四紙はいずれもウクライナ戦争に端を発した国際社会の枠組みの変化をテーマにしている。欧米主導の民主主義国家群」対「中露主軸の専制主義国家群」へと、その世界認識は、切り口、力点の置き方、材料の工夫は違えど、ほぼ同じことが分かる。しかし、かつてのイデオロギー対立から、政治体制の対決に移ったというのでは、まるで歴史は〝先祖返り〟したかのようだ。人類の混迷は深い。この闇を晴らせる手立てやいかに。解題の補助線は、やはり〝第3の選択〟にしかないように私には思われる。「第三の77年」のゴールは、2099年。そこまでの道筋に思いをめぐらす一年にしていきたい。(2023-1-5)

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