【98】日中仲介競争を──岸田首相のキエフ視察と習近平氏のロシア訪問/3-26

 恐らく偶然に日本の岸田首相と中国の習近平主席が、つい先日同時期に2つの戦争当事国ウクライナとロシアを訪れた。果たして、この営みが戦争終結に繋がっていくのかどうか。岸田氏はG7議長国として戦争の現地を見ておかねば、との一心だったかのように伝えられている。一方、習近平氏は、孤立するロシアに支援の手を差し伸べようとしているかに見える◆戦争が始まって13ヶ月。膠着状態とでもいう事態が続く。ロシアの極東隣国の日本から見ていると、終わりの見えない泥沼化(むしろ血の海化というべきか)である。どちらかが倒れるまでの、チキンレースかもしれない。この両国の間に立って仲介すべき役割は、日本と中国にあると、今回の場面を見ていて、私には思われるのだが、事態はそう動いていない◆この両国は現時点で、殺傷能力を有する兵器を表立って供与していない。中国に対するロシアの強い要請はあるものの、同国はそれを踏みとどまっているようだ。日本については、それ以外の人道的支援を惜しまぬことを伝えたが、武器供与はしていない。このことの持つ意味は大きい。NATO諸国が積極的にウクライナに武器供与をしている状況下で、日中両国の姿勢は極めて重要だ◆岸田首相の電撃的訪問が単に現地を見ることで終わってはならない。また習近平主席もロシアの後ろ盾的ムードを奏でるだけではならない。一歩進めて、戦争停止に向けて日本と中国が動くことが出来れば、どんなに人類の未来にとって明るいか。こう書き進めてきて、何を非現実的な絵空事を言ってるのかとの声が聞こえてくる。だが、仮に無駄であっても、例えば、本格的な春の訪れを前に、日中両国の学識者、文化人が総立ちして、その方向性を誘う、「日中仲介競争」の役割を果たすべきではないか。そういうパフォーマンスすらない、「傍観者の葬列」にしか見えない現実を嘆く。(2023-3-26)

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