【101】明石市に見る新型ポピュリズムの台頭ー統一地方選挙結果から❸/4-30

●泉市長支持の背景に潜む〝時代の空気〟

 選挙を前に、泉前市長への賞賛側と批判サイドは、くっきり二分化されていた。称賛する人びとは「子育てしやすく、住みやすい町」になったのは市長の力だとの声に代表された。一方、批判する側は、その裏返しとしての、全て自分がやったという身勝手さと、悪辣なまでの自己宣伝に対し、反発を抱いたのだった。

 泉批判の声はこの一年、急速に強まっていた。とくに、専決処分による事業断行について「市長問責決議」が出されたことへの一連の恐喝まがいの発言は決定的で、それゆえにこそ当の泉氏も「引退宣言」をせざるを得なかった(2022-10-12)のである。

 しかし、ことはそれでも収まらなかった。泉氏が「周辺市からの明石市への人口流入について、誤解を招く数字のマジックを使ったこと」や、子育て関連予算で、議会の後押しを受けてきた過去を否定するといった「舌禍」とでも言うべきことに、反発が相次いだ。前者は加古川市の岡田康裕市長(23-1-27)、後者は、前明石市副市長の宮脇俊夫氏(2-15/16 上下2回)によるもので、共に神戸新聞に掲載された。岡田氏は隣接市長としていかに迷惑を被ってきたかをデータを上げて克明に語っていた。宮脇氏は直接泉氏を支えてきたものの、あまりにも無謀な態度に辞表をだすに至った経緯を冷静に書いていた。

 こうした具体的な事実を挙げての批判が続いた。だが、泉氏が政治家を辞めるとの前言をひるがえして、土壇場に出馬するかもしれないとの疑念も消えなかった。それほど泉市長は何をするか分からないとの空気が市中枢部及びその周辺には漂っていたのである。

 しかし、時期が来ればしかるべき人を後継者として選ぶと言っていた泉市長は、その通りの行動に出た。一方、対立する自民党サイドも〝敵の出方〟を見分けかねたかのように、ズルズルと歩調を遅らせ、本格的に候補者を決めて動き出したのは一歩ずれていた。この候補擁立の呼吸━━泉市長サイドが一歩先んじていたこと━━が全てのように外からは見えた。

 選挙に際して、ある子育て世代の女性が「私たちは、市長が市職員にパワハラをしたとか、市議さんたちに暴言を吐いたとかは、殆ど関心がない。それよりも、自分達の生活向上に誰が熱心に取り組んでくれるかが重要だと思う」と述べた言葉が印象に残っている。(2023-4-30  以下つづく)

 

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