【120】「日本壊滅」のリアル━━関東大震災100年と南海トラフ大地震を前に/9-8

 さる9月1日は「関東大震災」から100年が経ったということで、様々の媒体が特集を組んでいました。その中で、とりわけ注目されたのは2日にわたるNHK による『関東大震災100年』の放映(前・後編)でした。残っている記録映像をカラー化したり、専門家の手で日時や場所を特定する作業によって、これまで不明だったものが鮮明になったことは大きな収穫でした。もちろん、「陸軍被服廠跡」での大惨事や「朝鮮人虐殺」、橋の上の大混乱などの詳細な映像はありませんでしたが、緊急時にも関わらず、惨事直前に映っていた人々のゆとりある表情がものの見事に捉えられていました◆一点、気になったのは、川に架かった「橋」についてです。映像では当時の住民が逃げる先を求めて、墨田川に架かった橋に両方から殺到したため押し潰されたり、川に飛び込んでの溺死を大量に生み出したとしていました。当然でしょう。ところが、一方で水天宮近くに架かった橋ではそうした惨事を免れたというのに、そこは全く触れられていませんでした。1日付け毎日新聞の1面コラム「余滴」では、警察の誘導による見事な美談が残っており、感謝の石碑の存在まで建てられていることに触れています。総じて、巨大都市にあってはむしろ「逃げないこと」が大事だというのがポイントかもしれないでしょうが、その辺りも未消化のままでした◆一方、私が注目したのは、南海トラフ大地震がこの30年内に発生する危険性が70〜80%あるとの予測の上に立ったドラマ『南海トラフ巨大地震』です。時間差で襲ってくる「半割れ」の恐怖を描いていました。ドラマの見応えは十分でしたが、エンディングにはいささか失望しました。鉄工所経営に失敗した主人公の1人が震災を機に思い直し、缶詰めの生産に取り組むというのですが。あまりに普通過ぎて夢がない、ギャグの変形のように思えました。翌日にはドラマに登場した男女2人の俳優と学者による第二部「最悪のシナリオにどう備えるか」が新企画で興味深い内容でした。尤も、気象庁職員を演じたヒロインが現実における自分の防災意識のなさを正直に話したため、微妙な失望を禁じ得ませんでした。現実での俳優の発言とドラマでの振る舞いのギャップは程々にしておかないと、「幻想が崩れる」という勝手な私的感想です◆100年前の実録と30年以内の未来予測とを合わせ観て、私の胸に去来するのは「日本壊滅」のリアルです。阪神淡路大震災と東日本大震災の二つを超えるような巨大地震がほぼ同時に日本を襲うという想定は、いかに楽観的で呑気な人でも戦慄を覚えざるを得ないと思われます。有史以来日本列島は一定の間隔をおいて、着実に大震災に襲われてきましたが、その都度不死鳥のように立ち直ってきたとの事実があります。しかし、今度はもはや希望的観測は成り立たないと思われます。河田恵昭京都大名誉教授も「(これを機に)日本の衰退が始まる」との警鐘を鳴らしていますが、私も同感です。私がこだわる『77年の興亡』は新たに第3のフェイズに入りました。2099年のゴールまでに必ず迎える事態にどう対応するかの構想を練る必要があります。国土交通省のトップをこの10数年連続して輩出してきた公明党は、この任に当たる責務があると思われてなりません。(2023-9-8)

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