プロ野球・阪神タイガースの優勝に大手がかかった14日午後6時過ぎの神戸ホテル・オークラは、衆議院議員・赤羽一嘉を激励する会の参加者でごった返していた。ドンピシャで甲子園球場の試合と重なってしまい、登壇者は次々に「アレのかかった日に‥‥」を口にした。18年ぶりの優勝だけに阪神ファンならずとも気になる対巨人戦だった。この日のスペシャルゲストのひとり河野太郎デジタル担当相は、自分は巨人ファンだがと前置きし、祝意を匂わせつつ話の口火を切った。来る衆議院選挙での「赤羽の勝利」に向けて自公結束の強さを見せつける重要な場面に、「阪神優勝」も花を添えたようだった◆前日の組閣で岸田首相は、重要6ポストの留任を軸に、ベテラン、新進取り混ぜた5人の女性大臣、11人のフレッシュな新入閣者を配置し、盤石の体制を作ったと見られている。この日もビデオで、同期当選の赤羽氏の活躍に期待する首相メッセージが披露された。岸田第二次再改造内閣の力量はこれから試されることになるが、「変化を力にする」との首相の言い回しは分かりやすいとはいえない。次々と変化する内外の情勢に押し流されず、的確な対応をするという意味だと捉えて、見守るしかなかろう。まずは、いっときの猶予も許されぬ経済対策に期待したい◆いかなる内閣も、改造直後はいわゆるご祝儀の意味合いが込められて、支持率はアップするのが相場だ。現今の政局を判ずる各種メデイアの展望や予測を眺めると、最も早くて、10月22日の補欠選挙(衆議院長崎4区と参議院徳島・高知選挙区)との同日投票を第一想定案として、11月から12月初旬にかけての総選挙の可能性があると睨むものが多い。これらはまた、首相自身は自民党内の勢力地盤が弱いため、来秋の総裁選挙に向けての基盤強化が第一の目標だとの見方で一致する。その上で、総選挙を今秋にするか、それとも明年の総裁選挙前にするかは、いつにかかって支持率アップを始めとする世の空気が大きく影響するということだろう◆ただ、私はこういう見立てそのものに、疑問をいだく。衆議院は4年任期であるものの、ほぼ3年で総選挙になり、しかもその時期は首相の恣意的判断に委ねられる。これまで戦後77年半、時の権力の〝生命維持操作〟の具に供されてきた。これから国をどういう方向に持っていくかの戦略的議論もいい加減なまま。目の前の政策課題に右往左往するのが精一杯という他ない様相が展開されてきたのである。現実政治の采配はもちろん大事だが、それと同時並行で長期戦略を時の与党勢力が考えずに誰が考えるのか。「常在戦場」は結構なことだが、総選挙の影に政治家も有権者もいつも振り回され大事な議論がその場凌ぎに終わることはごめん被りたい。自公両党のリーダーは、選挙互助のためだけの連立政権であってはならないことを強く銘記してほしい。(2023-9-15)