自公の食違いを追うと、「中道」の本質が見えてくる

新しい年が明けた。新聞メディアの各社説を読み比べてみた。「朝日」は内外の政治が溝を深め、分断が進んでいると危惧する。「毎日」は日本社会が国家主導か、多様な国民の声が反映される社会かの岐路に立っていると憂える。「読売」は安保法制の有効運用を主張。成長戦略を一層強力に進めたいとの現政権支持の姿勢を鮮明にする。「産経」は大型対談に安倍首相を登場させ、「批判されるほど燃える」との大見出しを掲げた。「日経」は、「日本経済生き残りの条件」を論じたうえで、「新たな『追いつき追い越せ』の時代がやってきた」と政権の経済運営に期待を寄せる▼この各社の論調傾向は、一昨年の集団的自衛権問題の閣議決定いらい一段と明らかになってきた。ネット時代の到来で落日の印象が強い「新聞」だが、ここはもっと自公両党の違いを鮮明にあぶりだすべきではないのか。ほぼ50年前から日本の政治に関わってきた者からすると、各紙とも今、政権の一翼を担うに至った公明党への関心度がいまいち低いことに違和感を持つ。安倍政権を非とするものも是とする側も、この政権が自公の連立政権であるといおう当たり前のことを見損なっていないか。政権を攻撃するなら、安倍首相を批判して事足れりではなく、公明党も糾弾されて当然だろう▼安保法制の成立過程にあっても、消費税の軽減税率導入の決定過程においても、公明党の主張や対応があっての結果であるのに、どうもなおざりにされている感が強い。つまり途中経過が見落とされているのだ。かつての自社対決の時代に、安全保障が同じ土俵上で論じられないことの虚しさをどれだけ感じたことか。それがソ連崩壊、「冷戦後」の時代になって、ようやく変化すると期待したのに。結局は元の木阿弥的状況を今の民主党を中心とする野党が現出させている。消費税論争も同様だ。現実的な合意形成を必死に進める公明党があればこそ、憲法9条の枠内での日米同盟の新展開や家庭の台所を守る軽減税率の導入が実現した。そこには自民党政治との大いなる戦いがあった。それを正確に追うメディアがないのはいささか不可思議である▼「朝日」「毎日」が政権批判をするときに、公明党の戦いをどう位置づけているかを、「読売」「産経」が政権を評価する際に、自民に寄りすぎの立ち位置ではないかを注視したい。自公の間で連立政権が壊れるぐらいの論争がなければ、ぬるま湯で満足している野党しか存在しない日本の政治のお先は真っ暗だと言うほかない。自公政治の違いを追う中にこそ中道政治の何たるかがわかってくると私は考える。(2016・1・3)

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