近年、18歳未満の子どもたちを始めとする若者が両親や祖父母の世話をするために、家事や介護を余儀なくされ、学業などに支障をきたすというケースが増えてきています。いわゆる「ヤングケアラー」と呼ばれる若者、子どもたちの抱える問題を指します。私の友人で作家の高嶋哲夫さんは、ヤングケアラー問題こそこれからの日本が直面する最大の社会問題だとして小説を近く刊行、世に警鐘を乱打しようとしています。そこでこの問題に熱心に取り組んでいる伊藤孝江参議院議員と私の3人で鼎談をしました。以下、そのエッセンスを掲載します。
【赤松】高嶋さんは、つい先頃『落葉』って小説を発表され、パーキンソン病を患う老人が若者と力を合わせて世の変革に立ち向かう動きを描かれましたが、今度はまたヤングケアラー問題に注目されていますね。
【高嶋】親しい編集者と話していて、今子どもたちを襲っている問題は、家族の面倒をみる負担が大きいってことから来ている──つまりヤングケアラー問題だってことに気づきましてね。それを『ファミリー』(仮称)ってタイトルで小説を書き出したんです。(今秋刊行の予定)
【赤松】家族の絆が断ち切られることがあってはいけないってことですね。伊藤さんはかねて「ヤングケアラー問題の伊藤孝江」と言われるぐらい、熱心に国会でも取り上げてきていますが、きっかけは?
【伊藤】3年ほど前に、地元の東兵庫の女性議員の皆さんとの勉強会で大阪歯科大の濱島淑恵教授のお話を聴いてからですね。その後、まだ年端もいかない子どもさんたちや青年たちが親世代の苦労を抱え込むなかで、悪戦苦闘してるってことの大変さを身近に見たんです。で、なんとか政治の力で少しでも解消させたいって、思ったのです。つい先日(6月5日)に国会で成立した「子ども子育て支援法(改正)」って、国や地方自治体がしっかりヤングケアラーを支えていこうという法律です。
【高嶋】それは大きいですね。この問題はまだまだ世間に知られていず、ヤングケアラーって何それ?っていうのが実態ですよね(笑)
【赤松】カタカナ言葉は、どうしても年寄りには馴染まないから。「老老介護」ならまだしも(笑)ね。以前、伊藤さんに「ヤングケアラーばっかりやってないで、もっと女性全般が抱えるおっきいテーマを追わなきゃあ」なんて、ヤングケアラー問題が分かっていない頓珍漢なこと言って、ホンマに失礼しました(笑)
【伊藤】そんなことありましたっけ?わたし、先輩の忠告、どっちかっていうと、直ぐ忘れるんです(笑)。ところで、高嶋さんの小説って、どんな筋書きですか?
【高嶋】先輩の忠告すぐ忘れるって、いい習慣ですね(笑)。私の小説は、主人公が女子高生。母子家庭で母親が看護師で忙しく、交通事故で重度の障害を持つようになった兄と認知症の祖母の面倒見るため、ヤングケアラーとして生きているという設定です。そこに家族3人が悲惨な事件に巻き込まれて殺されるというとんでもないことが起こってしまいます。さあ、誰がやったか?どうして?なぜ?ってことから、物語が始まるんです。
【伊藤】いやあ、いきなり衝撃的展開ですが、面白そうですね。読みたいです〜。でも、ヤングケアラーが犯人だったなんていやですよ。どう進展して決着するのか、こっそり教えてくださいませんか?(笑)
【赤松】高嶋さんは稀代のストーリーテラーだからね。あっと驚く展開だよ、きっと。でもネタバレは厳禁だから。あとは読んでのお楽しみ〜(笑)で、その小説をもとに、どうしようっていうのですか?
【高嶋】ヤングケアラーがいかに重圧のもとに生活しているかの問題提起をして、世間の関心を喚起する一方、政治家の皆さんに本腰あげてもらうべく、一大社会運動を起こそうって企んでいるんです。
【伊藤】それは凄く大事なことですね。私もできることはなんでもしっかり協力させて頂きますよ。
【赤松】本が出版されたら、まず、公明新聞紙上や、理論誌『公明』誌上で2人で対談して貰うっていいなあ。
【高嶋】赤松さんの最新本『ふれあう読書──私の縁した百人一冊』(上)では、『首都感染』を取り上げて頂きまして、ありがとうございました。ただし、あれって古いですよね。もっと新しいのお願いします。(笑)
※以上は、6月15日の夜に神戸市垂水区の高嶋哲夫事務所で行った懇談会での話を、鼎談風に要約しました。