【177】問われるべき「連立」の有り様━━自民党総裁選を前に思うこと(中)/8-26

●「政治とカネ」「旧統一教会問題」への不見識

 今回の自民党総裁選挙には10人を超える候補者が名乗りを挙げようとしている。中でも最も若い部類に入るのが小林鷹之氏。かねて「経済安全保障」をめぐる主張をテレビで観て注目に値する人物だと記憶に残っていたことを覚えている。しかし、出馬表明して以降の言動を聞く限り怪しげな部分が多い。先日の毎日新聞の夕刊では佐藤千矢子論説委員が「政治とカネ」をめぐる彼の発言ぶりが「あまりに後ろ向きで、驚いた」と、具体的に列挙していた。また、旧統一協会との関わりでは、作家の鈴木エイト氏が統一教会のPEACE ROADイベントで、「公明党さんが勉強されている教えより、皆さんの方が上ですよ。自民党の国会議員として真の家庭運動ができるよう皆さんと一緒に頑張ります」と挨拶していたということを、ネット上で公開している。

 この発言の有無については、同党議員らしく例によって曖昧な言い振りで否定している。ここで改めて「勉強の対象」が何を指すか、から始まって両者の比較などするほどのヒマは当方にないから論及はしないものの、少なくとも連立相手の「公明党理解」がおよそ幼稚であることだけは見てとれる。発言を否定しておられるようなので、それなら改めて聞いてみたい気がする。公明党の議員たちが「勉強している教え」って何なのか、またそれどこまで知っているのか、と。

●公明党との政策選択への異論を問う

 こうしたことから私が懸念するのは、自民党の総裁選挙に名乗りを挙げた候補者たちがこれまでその選挙戦を通じて、連立政権の是非を正面から問うたことがあるのか、という点だ。小渕恵三首相の要請に始まって、公明党が連立政権に参画してから20年余。途中、民主党政権誕生によって下野した3年間ほどを除き、ずっと政権を一緒に担ってきたが、その間の総裁選挙で公明党との連立の是非をめぐる議論は殆ど聞いたことがない。そのくせ、様々な政策選択の場面で、不協和音が出ては消え、消えてはまた出てくる。

 直近でいえば、「政治とカネ」の問題で、公明党の意を汲んだ岸田首相の決断に反発した人たちが数多くいたとされることは、先般のNHKスペシャル番組でも報じられていたし、防衛装備輸出(移転)問題での決着についても公明党サイド寄りの結論に異論が自民党内にあったことはよく知られている。さらに遡ると、安保法制論議での集団的自衛権の部分的容認をめぐって、自民党内に不満を持つ人々がいたことも同様だ。これらは、その時どきの首相が公明党のリーダーとの間で合意をしたことに、異議を唱える人たちがいたことを意味するのだが、そうしたことの積み重ねが、自民党の中から、公明党がブレーキをかけるがためにその政策選択がうまくいかないとの不満の源泉になっているのではないか。

 そうした問題について、議論を侃侃諤諤とすることがあっていい、と私は思う。岸田首相が総裁選挙に出ていたら、当然そこいらは議論の対象になっただけに、不出馬は残念な気がする。しかし、ぜひ、候補者には、自公両党の選挙協力以外の、政策選択のあり様をめぐっての意見を披瀝して貰いたい。(2024-8-26  この項続く)

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