【183】苦節時代の心忘るべからず━━前略 石破茂・自民党新総裁殿/9-28

★実行の優先順位は一に「政治とカネ」、ニに旧統一教会問題

 石破さん。総裁選挙ご当選おめでとうございます。「今度こそ」を繰り返されること4回、5度目の挑戦で念願を遂に果たされました。自民党のためだけではなく、「国家、国民のため」に、あつい志を持ち続けてきた貴方だけに、党再建に今まで掲げられてこられた主張を通し抜かれていくことを強く期待しています。

 苦闘の季節を貴方が過ごされていた頃のことです。いざという困難にこの国が直面したら、必ず登板する機会があるから、その日のために準備を怠らぬようにと激励をしました。また、安全保障分野ばかりでなく、国政全般の課題に習熟されるようにと、自分のことを棚に上げて偉そうなことを言ったことがありますよね。覚えていますか。

 政治家として私は貴方より後輩ですが、年齢がひと回り上の酉年ということや、同じ大学で学んだ同窓とあって、それなりにお付き合いを交わせていただきました。またかつて貴方が自民党を離党され、一時的にせよ私たちと同じ党に所属されたことを忘れてはいません。同床異夢の側面なきにしもあらずですが、自民党という政党を一緒に外から変えようとした一つの得難い時代だったと私は思っています。

 しかし、時は移り、貴方は古巣に戻ってもう一度一から出直そうとされてきました。一方、公明党は、外からの自民党政治の変革の難しさを知って、一転、政権内から同じ与党として、変革に取り組むことになりました。党は違えども、自公連立政権という枠組みにおいて「再びの同志」となったわけです。自民党に返り、総裁を目指されてきた貴方を、私はこの短くない歳月をずっと、そういう目で見てきました。

 総裁になられて、ありとあらゆるテーマについて解決に着手されることになりますが、まず心底から銘記されるべきは「自民党改革」であることはいうまでもありません。それは、とりもなおさず「政治とカネ」というハード(構造)面と、旧統一教会問題というハート(精神)面の2つにきちっと決着をつけることだと思います。

★キリスト者としての見識こそ

 ここでとやかくは申しません。安倍晋三という近過去の自民党にとって巨大な存在であった先輩総裁と正面から闘ってきた貴方を私は高く評価、尊敬してきました。実は、安倍元首相を私は「功罪相半ばする」存在だと位置付けています。いいところと悪いところそれぞれあった、と。今、改革の対象となっている両面で、彼の所業は残念ながら「罪」と言わざるを得ません。それを心ある国民はしっかり理解しています。ここを曖昧にしてしまっては、結局貴方も「同じ穴の狢」と言われかねません。

 また、旧統一教会問題も、もうケリはついたとして、議論を遠ざけることは禍根を残します。自民党という政党が宗教の仮面を被った得体の知れない集団に、「反共」であるという側面だけから、選挙支援に依存してきた事実は幾重にも検証し、自省されるべき問題です。実はこの問題で、私が期待するのは貴方がキリスト者だという一点にあります。「宗教に対する畏敬の念と、真摯な理解が決定的に我が党には欠けている」との貴方の返答は「確かなる希望」だと、私の目には映ります。

 さて、私は今回の自民党総裁選で、「自公連立」について言及した候補者がいなかったことに、深い失望を抱きました。残念ながら貴方もされなかった。しないことは、わざわざ言わずとも連立は当たり前だと思ってるからでしょう。しかし、私はこの国の将来を見据えた上での憲法を軸とする国家観、米国、中国を始めとする世界各国の中でどう生きるのかの世界観、突き進む少子化への対応など社会保障観などで両党が徹底したビジョン論争をすることこそ大事な点だと思います。

 当面する「政策合意」をかわして終わり、というのではなく、両党の絆をより確かなものにする奥深いところの議論をぜひ貴方が音頭をとって、やっていただくよう提案したいと思います。野田佳彦立憲民主党代表が、貴方との党首討論を腕を撫しつつ待ち構えているとの報道があります。2人の対決に議論好きの多くは期待しているところです。相手にとって不足なしでしょうが、貴方の質問がいつも長くて講義調だったことに一抹の不安を持ちます。

 質疑はショート・クエッション、クリエイティブ・アンサーを持って旨とすべしと私は尊敬する先輩から聞きました。くれぐれも長くて訳のわからん答弁をされませぬように、老爺心ならぬ老輩心から余計なことを申し上げます。以上、お元気で。なお、地元での奥様の素晴らしいお姿をテレビで拝見しました。この妻ありて、と多くの日本人は思ったはずです。呉々も大事にして差し上げてください。これまた余計なことですね。

(2024-9-28)

 

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